オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年6月14日レター)

【読者】地方でイベント企画を手掛けています。景気が良いときには、ホテルで人気歌手のディナーショーを企画したり、落語や漫才などのお笑い企画を実施したりしてそこそこの利益が上がっていたのですが、コロナが始まってからは、お客様を大々的に呼べなくなってしまいました。

そこで、いろいろと試しながら、感染対策を十分にとったうえで、小規模のイベントを数多くこなす方針に変えました。そのため、設営のための人手をたびたび確保しなければならなくなったのです。

当初は派遣契約で経験のある人を頼んでいたのですが、短時間での突発的な仕事が増えたため人員を確保するのに手間がかかりますので、必要なときだけその都度短時間の働き手を確保できるいわゆるギグワーカーを募ってこの危機をしのいでいます。ギグワーカーには雇用契約が不要で、必要なときだけ働いてもらえるのでこちらには非常に都合がいいのです。

しかしながら、やっていくうちに、万一事故が起きたときの保障などどう手当てしたらよいか、人を育てられずノウハウが蓄積していかないことなど、現場でのデメリットが意外と多いことに気づきました。コロナの時期だけの措置と考えておりましたが、この危機がいつまで続くのか先が見えないため、コロナとは関係なく長期的な人材を確保できるような仕組みを考えるべきなのではないかと思い始めています。

コロナが終わったあかつきには人が育っていてすぐにも成長路線に転じられるように投資したいのはやまやまなのですが、手元流動資金の状況からなかなかむずかしく、悔しいです。不景気のときにやっておくべき成長への準備について、迷いやジレンマがあります。宮内さんなら、どう動かれますでしょうか。

今は無理をせずに生き残ることが大切なのではないでしょうか

【宮内】イベント事業は、今最もコロナの影響を受けている一番辛い状況にある業種の一つだと思います。これほどの危機は、一生に何度もないと思います。そのような危機にあっても、ご質問者は長期目線で人材の確保について考えておられる。たいへん立派なことと思います。

この後はあと半年、この年末頃まで何とか生き残ることができたら、ワクチンの接種が進み、経済に明るい兆しが見えてくるというところまで来ていると思います。それまでは、猫の手を借りてでも生き残れるように考えることが大事なのではないでしょうか。今の状況はまさにサバイバルゲームと化しており、生きている限り、正常化した後にはまた新しいことにも取り組める日が来ます。

もちろん、長期的な人材育成について考えることは重要ですが、今はギリギリの状況でなんとか事業を継続しているということですから、満足はできなくてもギグワーカーを使ってでも生き続けることが一番大事ではないでしょうか。まずは生き残ることを第一に考え、今は無理しない方がよいと思います。ギグワーカーの保障や手当については、今はできるだけのことをしておくということが肝要なのではないでしょうか。

経営には、もう少しお金があったらできること、もう少し良い人材がいたらできることなどの思いがつきものです。しかしながら、それは危機のときにはできないことです。今持っている人材、ネットワーク、資金、信用等、経営資源以上のことはできません。持てる力で持続を図る時なのです。いろいろと悩みは尽きないと思いますが、あと半年ほどの間は、今持てる能力で生き続けましょうというのが私のアドバイスです。

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