オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年10月18日レター)
【読者】教育関連のサービス業で、オンライン教材を作成してお客様に販売する仕事をしています。新商品を発売する際に、適正な価格の決め方についていつも悩みます。
お客様のニーズをヒヤリングし、企画を立て、構成を練り、コンテンツを作成し、きれいにデザインして教材をつくります。お客様にわかりやすく伝わるか、ニーズを満たしているか等々、心を込めて作成しています。商品づくりに思い入れがありますので、安売りはしたくないですが、かといって高すぎる値段をつけても、売れなくなってしまいます。
これまでは、原価やコストを計算して、ライバル社の商品の値段を調べ、利益が得られるような値ごろ感を考えて価格を決めていました。ですが、新商品をいくらに値付けすれば一番売れるのか、悩みます。宮内さんは、新商品や新サービスの値付けをする際に、どんな風に考えて決められているのでしょうか。
お客様が買ってくれる値付けを元に商品・サービス設計をした方が、良い結果に結びつきます
【宮内】価格の決め方については、基本的なイロハになってしまいますが、一つには、コストに利潤を乗せて算出する方法があります。もう一つは、マーケットの中で似た商品やサービスの値段を元に決める方法です。
もし、コストに利潤を乗せた値段がマーケットで売られている値段よりも高くなってしまえば、この商品・サービスの付加価値が相当高くない限り、誰も買ってくれません。また、商品が多く売れれば一つ当たりのコストが下がるので、販売数・コスト・価格との関係を見極める必要も出てくるでしょう。となると、ライバルに勝てる価格にするには、想定よりも多く売る仕掛けや戦略が必要になってきます。
逆に、お客様の立場で考えてみましょう。“この商品を買ってもいい”と思える価格のラインがあります。お客様の買える値段を考えて、そこから外れないように、価格を決める必要があります。
これまで、特に日本のハイテク企業では、どこにも負けない高い技術の商品を作れば必ず売れると思い込む傾向がありました。エンジニアとしてはこのように考えがちなのですが、お客様は高い技術にこだわっているわけではありません。使いやすくて便利なものに魅力を感じます。つまり、高い技術よりも、大衆的なものが欲しがられていると感じます。
製作者の思い入れで素晴らしいと思えるものを作成し、かかったコストに利潤を乗せて価格をつけたとしても、お客様が購入してくれるとは限りません。それよりも、お客様目線で、お客様が買ってくれる値付けを元に商品・サービス設計をした方が、良い結果に結びつくと思います。要は供給側のマニアックな思い入れはコストを高め、消費者離れを起こしてしまうのです。