オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年6月28日レター)

【読者】主にテレアポで化粧品を販売する会社でマネジャーを勤めています。現在100人弱のセールス担当がおり、一人1日に100件の電話をノルマとしてかけさせています。電話のマニュアルがきっちりと整備されていて、架電状況を日次でモニターしています。

これらのノウハウは、現社長が営業職だった25年前の経験に基づいていて、それによりますとアポが取れるのは電話10本につき1本。そして、アポ10件でようやく1件受注できるとのこと。社長はこの“法則”に気づき、架電方法をいろいろと工夫してマニュアルをつくり、架電数を管理してダントツの営業成績を上げたという実績をもっていたようです。今の架電数のノルマはこの営業実績から計算されたものです。

たしかに社長の過去の実績や専門性はとびぬけて高いものだと思いますが、専門外のことにも口を出し、自分の思い通りにならないと癇癪を起こすこともあります。社員の言うことに耳を傾けることはあまりありません。

マネジャーとして、セールスパーソン全員に旧態依然としたテレアポのスタイルで営業をかけさせるのではなくて、テレビショッピング、広告、SNSを使うなど、もっと効率的で効果的な方法があるのではないかと考えています。

このままでは、社内に社長のデッドコピーを増やすことに終始してしまい、マネジャーとしての力を発揮する機会もなく、モチベーションを保てなくなってきました。過去の成功事例から抜け出すことができない現社長に別の方法を提案しても、耳を貸さないことは目に見えています。このような社長の下、自分はどのように行動すればよいでしょうか?

今の地位を守るか、力をつけて飛び出すか。ご自分の行く末をじっくりと考えてみてください

【宮内】世の中は急激に変わっていますから、一度成功した体験を金科玉条のごとく守り続けているのでは、変化に対応できているとはいえないでしょう。成功体験ほどこわいものはありません。世の中が変われば、それに合わせてサービスや販売方法をどのように変えるかを考え、できれば世の中の動きの半歩先くらいをいく必要があります。こうした考えを実行できてこそ、一つの企業を引っ張っていくことができるのです。貴社の社長は、そういった意味で決して及第しているようには思えません。

100人を統率する営業マネジャーとしての職責と地位を守り、社長の下で唯々諾々と過ごすのが自身にとっても部下にとってもよいのか、もっと自分の実力が十分発揮できる働きがいのあるところで頑張りたいと思うか。ご自身の行く末をよく考えるということに尽きると思います。

もし、社外に飛び出してもやっていけるという自信またはチャレンジ精神があれば、社長に対して自分の考えや思いを伝えてみてはいかがでしょうか。万が一、社長が考えを改めてくれればそれでよし。状況が変わらなければ、丁寧にお礼を伝えて、思い切って転身するということも選択肢の一つです。

このような旧態依然とした販売方法を続けていると、遅かれ早かれ従業員がついていけなくなり、効率が低下していくことが予想されます。今の会社で働くことに将来性を感じられないのであれば、また仕事にやりがいを見いだせないのであれば、新しい道で生きていくという決断は、希望を持てる選択だと思います。そのためにも、常に自分の力を磨き続けておくことが大切なことだと思います。

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