オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年8月23日レター)
【読者】半導体の素材を製造する会社で販売課長を勤めています。新型コロナウイルス禍の中ですが、本年の上半期は、自動車業界の回復、5Gスマートフォンの需要拡大、巣ごもり需要でゲーム機などが堅調なため、供給不足となるほど市場は成長しています。私は、販売課長として、またとないこの活況期に、新規顧客を開拓し、売上を伸ばすような体制をつくるべきと考えております。
ところが、上司である営業統括部長が、販売網を拡大することについて、なかなか私に権限を委譲してくれません。具体的に言いますと、会社全体の動向や販売状況などに関する情報共有を進めてくれません。また、研修や能力開発に必要な経費の上限をかたくなに変えてくれないこともあります。そして、意思決定する会議に参加させてもらうことが無理ならば、せめてその情報を共有していただけないか、と考えています。現場で動く我々にとって判断材料がほしいのです。
これらの壁を外してもらい、お客さんの提案に沿った新しいことに挑戦させてもらいたいと考えているのですが、なぜなのか理解できません。上司の考えを変えてもらい、権限を下ろしてもらうにはどうしたらよいでしょうか。
権限を得ることは、同時に大きな責任が生じるということでもあります
【宮内】ご質問者の会社が置かれている状況を推察しますと、半導体市場は今とても好況で供給不足になっているということですから、新規顧客を開拓するよりも、既存顧客を大切にして満足してもらうことを優先するべきだと上司の方は考えているのではないでしょうか。反対に、供給が余っている状況であれば、販路拡大のために積極的に営業活動をするよう、上司は指示を出すのではないかと思われます。
まずは、今、半導体業界を取り巻く環境で起きていること、その上で貴社の将来にとって一番大事なことを踏まえたうえで、販売課長として何をすべきなのかをよく研究し、ご自身なりに分析した上で、上司の方とじっくりコミュニケーションすることをおすすめします。
ご質問者の考えがきちんと上司に伝われば、これからあなたを頼りに思うかもしれません。権限を下ろしてほしいと希望することは簡単ですが、権限を得るということは、同時に大きな責任が生じるということでもあります。権限を望むのであれば、あなたがどのように責任を果たせるのかについても、熟考する必要があるでしょう。
情報共有を進めてくれない、必要経費を認めてくれない、会議に参加させてくれないという不満をお持ちのようですが、なぜ、上司との間でそのような行き違いが起きているのでしょうか。上司の立場に立って推察してみてください。そうすれば、一段高いところからの視野が広がって、やるべきことが見えてくるはずです。その上で上司と対話されると、新たな展開が見えてくるような気がします。