職場ではいろいろな嘘が横行しますが、なかでも許しがたいのは、人の成果を自分のものだと偽る人です。誰かにサポートしてもらってようやくできたものを、一人でやったと主張する、ずるい人もいます。他人の手柄を平気で横取りする人には、どう対処すればいいのでしょうか。そもそも横取りする人の心理はいかなるものなのでしょうか。

今回はずるい人から手柄を奪われたときの身の処し方とともに、横取りされないための防御策を解説します。

ずるい上司は非難するより「名より実を取る」で利用

自分がまとめた企画案を上司に提案したら、上司が経営陣に自分の提案として報告していた、というような話はどこの組織にもあることです。

いったい他人の手柄を平気で横取りする人の心理とはどのようなものなのでしょうか。じつは、状況によって心理的背景に違いがあります。

たとえば冒頭で紹介した、上司が部下の提案した企画をあたかも自分が考えたように上に報告したというような場合なら、その上司は自分に自信がない人である可能性が高いでしょう。自分の実力に自信はないのに、社内評価を高めたいといった野心は強い。だからなりふり構わず自己アピールするのです。

自分の地位を守るために手段を選ばない、つまり人の手柄を横取りしてしまうといった自己中心的な行動に出るのも、自分の実力に自信がなく、気持ちに余裕がないからです。

そもそも実力がある人なら自分の仕事にプライドを持っています。部下が考えたアイデアを自分のものだと勘違いされることは、むしろ嫌がるでしょう。

こちらの企画を横取りしようとする上司に対しては、「あの企画を考えたのは私じゃないですか」と詰め寄りたくなるかもしれませんが、それは止めておきましょう。

自信のない人のプライドを傷つけてしまうと、何をしてくるかわかりません。そもそも手段を選ばない人ですから、あらぬ噂を立てたり、不当に低い評価をつけたりと、えげつないことを平気でしてくるかもしれません。

それに日本の組織では何かもめ事があると、ことの真偽にかかわらず、ことを荒立てた人が悪者にされてしまう傾向があります。

ですから上司には手柄を渡してやるかわりに、自分のやりたい企画をどんどん通させる、というふうに利用してはいかがでしょうか。つまり「名より実を取る」戦略です。

上司が得意になって自分の手柄にしているのを、心の中で「実力がないから部下のアイデアを食い物にしないと立場が保てないんだな」と憐れんでやればいいのです。

いつかは自分の実績だと証明したいと思えば、その都度メールを残しておくとよいでしょう。提案した企画の修正案を送る際に「先日、私が提案させていただいた企画にもうひと工夫してみました……」といったやり取りを残しておけば、いざというときに自分の実績だったことを証明できます。