オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年10月11日レター)
【読者】小売業で売り場を統括するマネジャーとして、20代〜50代まで50人ほどの部下を預かっています。人手が足りない中で売り場を効率よく回していかなければならないので、労働環境が良いとはいえないかもしれませんが、働きがいを感じられる職場をつくれるように努力するマネジャーでいたいと思っています。
よくやってくれる部下がいる一方で、言い訳に徹する部下、やる気のない部下、不満ばかり言いつのる部下など、困った部下が数人います。部署全体のためにも、そして本人のためにも、叱らなくてはならないことはわかっているのですが、嫌われたくないという気持ちが先に出てしまい、部下を叱ることができません。これまで上司に叱られたこともほとんどなくて、恥ずかしいですが、叱り方がわかりません。
宮内さんは、これまでどんな考え方に基づいて、どのように部下を叱ってこられたのか、教えていただければと存じます。
叱ることよりも、決められた業務を遂行するように導くことが大事ではないでしょうか
【宮内】十分に仕事をしていない部下を叱って直させるというのは、少し発想が違うような気がします。“やる気がない”“態度がよくない”“不満ばかり言う”と叱られたとしても、部下はどうすればよいかわからなくなって、余計にやる気を失ってしまうかもしれません。
それよりもむしろ、一人ひとりの部下ごとにjob‐discription(職務内容)を細かく決めて、この職務とこの職務をやってくださいと的確な指示を与え、それをきちんとやってもらえば、何も問題はないわけです。もし、与えられた職務が十分にできなかった場合には、なぜできなかったかの理由を確認し、次回どうしたらできるようになるかコミュニケーションをとることが先決です。決められた職務を部下にやってもらうことが、最も大事なことではないかと私は考えます。
例えば小売業であれば、売り場の棚を30分に一度は点検して整理する、売り場にゴミが落ちていたら拾う、お客様の顔をみたら「いらっしゃいませ」と挨拶する等々、個別具体的なことを決めていくのです。それがよくできていれば褒めてあげればよいですし、できていなかったら、問題なくやれるように原因を解決する。褒めてあげれば、働きがいのある職場だと部員は感じるでしょうし、職務が上手くできていなければ、叱るのではなくて、上手くできるようにご質問者が工夫し、導いてあげればよいのです。
特に、エッセンシャルワーカーの場合は、お客さまの日常生活に関わる仕事ですから、業務が回らなくなってしまうのは大きな問題で、労働環境を改善することもご質問者の仕事だと思います。
部下を叱らなければならないわけではないし、叱って直るものでもありません。一番大事なことは、部下に必要な業務をやってもらうことではないでしょうか。
もし万が一、部下を叱ったとしても、叱りっ放しはいけません。叱ったあとで、少しでも改善したら「よくやった!」と認めてあげて、部下のモチベーションを高めることが大切です。