オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年7月26日レター)

【読者】脱サラして運輸業を始めてから20年ほどたちました。地元の製造業、流通業、サービス業、医療などお客さんを1つずつ開拓して、いまでは従業員70人ほどになり、何とかここまでやってこれました。

いつかは後輩たちにこの会社を引き継いでもらうように、また私に何かあったときのために、役職上No.2の男を置いてはいますが、正直言って能力がなく、信用してはいません。人柄は悪くないのですが、この男にはNo.2ができるような素養も、力量も、度量もありません。

常日頃から「今まで私の横にいて何を見ていたのか」、「こんな指示も社長が出さなければならないのか」、「これくらいのことも自分で決められなくて、どうするのか」、「ああ、私の分身がいたらなぁ〜」と心の中で嘆いています。私がワンマン手法で会社を引っ張ってきたことが間違いだったのか、それとも人に恵まれなかったのか、信頼できるNo.2を育ててこれなかったということは事実であり、私自身はがゆく思っています。

しかしながら、これ以上育てても芽が出ないので、この男に見切りをつけて、そろそろNo.2に足る人物を外部から連れてくる時期が来ているのかなと迷っています。何人か胸の内に候補はいるのですが、社長ができる器をもっているかどうか、能力が信頼できるかどうか、従業員がついていくかどうか、いろいろと条件を考えていくと、なかなか人選がむずかしいです。宮内さんなら、どうされますか?

後継者は“腹八分目”で満足してください

【宮内】創業社長が自分の代わりが務まる二代目を探すということは、かなりの難問です。創業社長は、ご自身の思いとエネルギーでこの会社をゼロから立ち上げ引っ張ってこられたわけです。ご自身と同等のレベルで経営ができる人を探すことは、そうは簡単にはいきません。

もし、社内に候補者がいないのであれば、外からすぐにNo.2になれる人を連れてくるのではなく、No.2になれるかもしれないという可能性を秘めた人を複数招聘して、競わせるということが現実的な方法かと思います。それでも結果が出なければ、また複数の人材を連れてきて、競わせる。これを5〜10年計画で続けていけば、本当のNo.2を育てられるかもしれません。この人だと思ったら、じっくり育てていくことです。

もし私なら、今社内にいる候補者を例えば専務として処遇しているのであれば、外部から連れてきた別の候補者も専務にします。仮に外部から来た人が勝ち残ったとしても、その人に早々に決める必要はありません。そこからさらに育成してみて、本当に適任であるかをじっくりと見ます。そのくらい時間をかけてもいいのではないでしょうか。

創業社長のあと、二代目、三代目が会社をさらに成長させているケースもありますが、自分ができたのだから二代目も同じことができるはずだ、との考え方はお勧めできません。二代目社長に自身と同じ水準を望んでも、自分とは違う人間ですから、それは無理というものです。後継者に自分と同じレベルを求めるのであれば“腹八分目”で満足してください。それとも自身と全く違うタイプを選任してやらせてみてはいかがでしょうか。

いずれにしても、創業者のあと、子息であれ他人であれ、二代、三代と会社が隆盛であり続けるのは例外なのではないでしょうか。実態としては、守りに入る人、遺産を徐々に喰っていく人、小さなことしかできない人などが多いように思います。ご相談者の悩みはよく理解できますが、と言って大きな期待を持たれることもお勧めしません。これが現実ではないでしょうか。

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