オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年4月19日レター)

【読者】地方で伝統的な日本の食材を製造販売する会社に勤めています。近々、五代目社長の父(70代)が会長となり、僕が六代目社長を継ぐことになっています。

父はいわゆる押し出しが強いタイプで、40年弱の任期中に数々の新商品を開発し、全国の百貨店やスーパーで販売する体制を作り上げ、当社を成長させました。地元経済界でも顔が利く存在です。父に負けないように研鑽を積み、六代続いてきたのれんを守っていきたいと考えています。

しかしながら、僕はまだ実績がなく、押し出しも父のように強いタイプではありません。古参の役員や社員たちが僕についてきてくれるのか、心もとなく自信がありません。父のように新しいことに挑戦し実績を積むしかないことは頭ではわかっているのですが、社長としてやってゆけるか不安が先だってしまいます。若くして社長に就任し会社を成長させた宮内さんに、年上の古参社員たちに対してリーダーシップを発揮するにはどうすればよいか教えていただけないでしょうか。

古参社員に教えを乞いながら、若き社長が挑戦することは山ほどあります

【宮内】五代目、六代目までのれんが続いてきたということは、貴社の食材ビジネスが非常に堅固なのだろうと感じます。そして、お父上もまだお元気で、古参社員の皆さんが脇を固めているというイメージを持ちました。

これからご質問者がやるべきことは、お父上と古参社員から徹頭徹尾学ぶことです。たとえば、お父上がもっている外部人脈や顧客を全て紹介してもらい、継がせてもらうこと。新商品を開発する秘訣は何か、これまでどのように販路を開拓してきたのか、自分の足りないところは何か、とことん教えを乞うて学ぶことだと思います。

自分が頼りないと思われているのではないかと、心配する必要はありません。これまで長年会社を引っ張ってきたお父上や古参社員からみると、まだ若いご質問者のことを頼りないと思ってしまうのは仕方のないことです。しかし、そんなことはおかまいなしに、懸命に学び頑張っている姿を見せることが大切です。誰が次のボスになるかということは、皆わかっているのですから。

お父上が全国の百貨店やスーパーで販路を開拓されたとのことですが、これからの時代は国内市場だけでは成長に限界がありますから、ECや海外へのビジネス展開も考える必要があるのではないでしょうか。若き社長が挑戦しなければならないことは山ほどあります。そのためにも、まずはこれまで貴社が築いてきたノウハウを自分のものにしなければなりません。

実は、私も社長になったときには、取締役は全員年上でした。そのあとに取締役をお願いした方々も皆、私よりも年上の方々でした。そういうときに私が気をつけていたことは、常に敬意をもち、丁寧な言葉遣いでお願いしていたことです。それさえ守っていれば、この若造を何とかしてやりたいと思ってくれるはずです。古参社員の方々を人生の先輩と思い、真摯に丁寧にお願いすることです。

最初から何もかも作り上げなければならないベンチャーと比べれば、既に六代続いたのれんがあるということはとても幸運なことです。お父上も、40年間経営者を続けている間に押し出しの強さを身につけられたのではないでしょうか。あなたには時間があります。新しいことに挑戦して、お父上を超える経営者となるようにしっかり頑張ってください。

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