オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年7月15日レター)
【読者】地域密着型の工務店で経理を担当しています。わが社は、お客さんの立場に立った施工業務を請け負うことをモットーにしています。アフターコロナを見据えて、お客さんの新たなリクエストに応えられる新規事業を計画しており、そのための人、モノ、お金の体制を整えたいという事情があります。
新規事業のメンバーが集まって知恵を出し合ったところ、お金については、新たな調達先として、クラウドファンディング、ベンチャーキャピタル、ファクタリングなどを検討してみてはどうかということになりました。これらの方法の信頼性、有望性、柔軟性はどうなのでしょうか。
また、人、モノについては、どのように計画してそろえていけばよいでしょうか。新規事業に取り組むのが初めての素人集団です。どのようにして勉強すればよいのか、どうすれば成功する可能性が広がるのか、誰も教えてくれる人がいなくて、宮内さんにお尋ねします。
“素人集団”で新規事業を立ち上げるというのはいささかリスクが大きいように思います
【宮内】新規事業に取り組むのは初めてとのことですが、新規事業の立ち上げというのは、わが社ですでに成果を上げている事業領域の周辺で新たな社会ニーズがあるようだ、有望で面白いからここを発展させて新規事業として開発しよう、というのが王道です。その事業アイディアが決まったあとで、事業に見合った資金や人材を集めてくるというのが本筋でしょう。
また、資金調達の方法として、クラウドファンディング、ベンチャーキャピタル、ファクタリングといった手法をあげておられますが、資金調達手法についても、事業リスクやそれに見合った必要資金額など、事業の性格に最も適した方法を検討するべきものと思います。
新規事業に関しては、経営トップがこの事業は見込みがあるのでやりたいと決断し、全責任を背負って進めるべきものと考えます。経営トップがコミットしなければなりません。
それを具体化する際に、各領域の専門知識のある人を集めて検討を進め、それに相応しい責任者とチームを作ることになります。厳しいようですが、“素人集団”が何か新しいことを発見し事業化に挑戦するというのはリスクが大きすぎるばかりか、やってはいけないことと思います。まずはトップの決断が先になければいけません。
ご相談内容を読みますと、すでに新規事業の方向性は定まっているように見受けます。それであれば、成功を導き出すまでの最強のチーム作りがまず求められます。資金調達については、その事業計画作りの過程で最善の方法、すなわちわが社の持つ現在の経営資源や実力からみて、何ができて何ができないのかを、まず検討すべきだと思います。