オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2022年2月28日レター)

【読者】メーカーで9年間経理の仕事を担当したあと、思うところあって、家庭の事情で学校や社会に馴染めない子どもたちを支援するソーシャルビジネスを起業しました。メーカーで働いていたときは、正直に言いまして自分の仕事が社会の役に立っているという実感が持てなかったことと、自分の生い立ちと似ている子どもたちをサポートしたいと思うようになったことがきっかけでした。

根本的に助成金や寄付金をいただいてその費用に充てるのではなく、ビジネスとして利益を得てそのお金で社会課題を解決できるようになりたいと考えています。実際には、学校や社会に馴染めない子どもたちが、学業から就職へ、就職してから職場に定着するまでをサポートしています。子どもたちと企業のマッチングが決まったときには、企業からフィーをいただくというビジネスの仕組みを考えています。

米国では、MBA(経営学修士)を取得した人々が、このようなソーシャルビジネスをつくりだしているということを耳にしました。今後、こういったビジネスの市場が拡大していくのではないかと思いますが、そのための技術やノウハウを学ぶ機会が日本では少ないようです。

このような社会課題を解決するビジネスで成功できる力をつけるには、どうすればよいでしょうか。そしてこうした試みを事業として社会に認めてもらえるようになるにはどうしたらよいでしょうか。

日本人として最も早く米国でMBAを取得され、名経営者と言われる宮内さんにぜひご教示いただけたらと思い、投稿いたしました。

ビジネスの仕組みを再考されることをおすすめします

【宮内】本来、社会福祉はビジネスにすることが非常に難しいので、政府や自治体など公的機関が担当するべき領域と私は考えています。そして公的機関のできないことをNPO組織などが補完していくということで、社会がよりスムーズに動くのだと思います。利潤動機で歯車が回る資本主義経済システムの外に、こうした重要な機関が存在し、社会が安定しているのです。

たとえば、介護施設を例にとって考えてみますと、私企業が富裕層を対象に事業化している施設もありますし、公的機関が低所得者層を対象に運営している施設もあると思います。そしてその中間部分もありますが、どこからが果たしてソーシャルビジネスの範疇に含まれるのでしょうか。なかなかはっきりと区分できないところがあります。

ほかの例では、ソーシャルビジネスの代表としては、マイクロファイナンスが挙げられると思います。これは社会福祉制度が整っていない国で、個人事業主や零細企業に小口資金を融資し、事業資金などに役立ててもらうことで生計を支えるという環境下で意味があるビジネスです。しかし、日本では利息制限法があり、悪くすると高利貸しと言われかねず、とても成立しないように思われます。

私たちオリックスグループも公益財団法人を設立して、将来を担う子どもや青少年の支援、環境保全などの分野で貢献できることがあると考え、さまざまな支援活動を行っています。具体的には児童養護施設や子ども食堂などに支援を差し上げるのですが、「使っていただいてありがとうございます」という気持ちで行っているものです。ですから、この活動で利益を上げることは全く考えていません。社会福祉とはこういった趣旨の活動ではないでしょうか。

本当に困っている人を助けながら収益を上げるというのは、非常に困難なことではないかと思います。ビジネスとして成立するということは、ともするとその人たちが公的に受けている社会福祉を搾取し、ブラックビジネスに近づいてしまうリスクもあります。

こうした点を考慮の上、ビジネスとして成立する事業設計が可能かどうか、熟慮されることをおすすめしたいです。社会福祉法人、あるいはNPO等、純粋に社会事業を行うことを目的とした組織で、意味ある仕事を考えられるのはいかがでしょう。