オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年10月25日レター)

【読者】中小の不動産業を経営しています。優秀な社員の中に、一人だけ組織のガンになっている男がいます。会議で後ろ向きの発言をして全体のモチベーションを下げたり、顧客とトラブルを起こしても自分の非を認めずに相手のせいにしてしまったり、ということが続いて非常に困っています。勤務態度を改めるように個別に何度か諫めたのですが、変わることはむずかしいようです。

1つの腐ったリンゴが、周りの新鮮なリンゴまで腐らせてしまいます。小さな会社なので、異動させる部署の余裕もなく、組織に利をもたらさない人材に給料を払い続けることはできません。この社員に辞めてもらうしかないのではないかと考えるようになりました。宮内さんなら、このような場合はどうされますか。

円満に退社していただけるよう導きましょう

【宮内】周囲に悪影響を及ぼす一社員のことで、かなりお悩みのご様子です。小さな組織ではなおさらのこと、影響が全体に広がる危惧が出てきます。

結論から申しますと、投稿を読む限りでは、お互いのために本人に辞めていただくのが一番良いのではないかと思います。ただし、その際には、喧嘩別れにならないように工夫される必要があります。

たとえば、常套句ではありますが、「あなたのような能力があれば、他社でもっともっと活躍できるところがあるはずです」、あるいは「あなたのような能力があっても、小所帯の当社では十分に発揮することはむずかしいので、あなたにとって不幸なのではないか」、「当方としても、あなたを応援するために破格の退職金を用意します」と伝えて、本人の気持ちを傷つけることなく、外に関心を向けてもらうようにしてはいかがでしょうか。退職金は、少しだけでも上乗せしてあげればよいと思います。

もう少し大きな規模の会社であれば、まずは配置転換を考えるでしょう。「この部署ではあなたの能力を発揮できないので、希望する他の部署に異動してはどうか」と伝えて、この会社は自分に合っていないことを本人が徐々に納得できるような環境を作ることも肝要です。

このままでは、ご本人にとっても、不幸なことになってしまうでしょう。双方にとって納得づくで話を進めることがよいと思います。

小さな組織で周りに負の影響を振りまく社員がいますと、それだけで経営に与えるマイナスが大きくなります。思い切って決断されることをおすすめしたいです。ただし、くれぐれも事後にトラブルを引き起こさないように、納得してスムーズに辞めていただくような工夫をされてください。

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