オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。

【読者】従業員が500名ほどのメーカーの役員に就任したばかりです。当社には、いわゆる派閥が存在しており、二大派閥である技術畑派と営業畑派の間に常に争い事があります。これまで私は派閥に所属するつもりはなかったのですが、役員に就任した頃から専務を筆頭とする営業閥に取り込まれているようで、技術閥からはすでに警戒されているようです。

私は、派閥などとは関係なく、会社のためによい仕事をやりたいと考えているのですが、役員になって感じることは、ほとんどの役員が会社のためというよりもむしろ派閥争いに勝ち残ることの方に力が入っているように思えてなりせん。くだらない抗争はやめて、表面的ではない融合に向けて動くべきだと考えています。

しかしながら、トップが派閥抗争の張本人でもあり、正面からやめましょうよと言っても相手にされないでしょうし、けむたい奴だとつぶされてしまうかもしれません。そこで、現場レベルから融合を始め、少しずつ会社のカルチャーを変えながら改革をしていきたいと考え始めたのですが、こんなやり方では何年かかることやらわかりません。宮内さんが同じ立場であれば、このような派閥抗争にどう対応されますか?

処世術を発揮しながら“for the company”を貫く姿勢をおすすめします

【宮内】率直な感想として、本来、役員の責務は会社を発展・成長させることなのですが、その役員たちが派閥争いをして会社にとってマイナスのことをしてしまうという、こんなことがあるのでしょうか。社内がこのように二分して派閥抗争に明け暮れているとしたら、会社が潰れてしまうのではないかという危惧をしてしまいます。

トップが派閥抗争の張本人であるとしたら、役員に就任しても、トップににらまれてクビになってしまえば元も子もなくなってしまいます。ですから、新任役員としてはなるべく敵を作らないようにしつつ、トップに疎まれない程度の付き合い方で処世術を発揮しながらも、ご自身の考え通りに一途に会社のためによい仕事をされてはいかがでしょうか。“for the company”を貫くということです。

どちらかの派閥に入って、もう1つの派閥を叩いてから会社のために働くというのは、やめた方がよいでしょう。敵か味方かということで人を区分けするのではなく、役員として会社の将来のためにやるべきことを粛々とやっていくのが正しい姿だと思います。

日本の製造業が陥りやすい過ちは、良い製品をつくれば必ず売れるという技術偏重の思い込みによって生じます。技術部門は、こんなに良い製品を作っているのにそれを売れない営業が悪いという。片や営業部門は、もっと一般向けの製品の方がはるかに売れるのに、こんなマニアックなものを作ってほしいなどと誰も頼んでいないと言う。それに対して技術部門はさらに、大衆向けの製品などつまらないから作りたくないと抵抗する。技術と営業の間にはこのような対立があったりするものです。こういったぶつかり合いが、ご本人にとっては派閥争いに見えているのかもしれません。

ここから導き出せる真理とは何でしょうか? 企業は売れる製品を作らなければならないということです。会社を勝ち組にするためには、売れる製品を作るしかありません。世の中の人々が欲しがるもの、マーケットのニーズを捉えたものを、いかに早く、適正な価格で供給することができるか、そこに尽きると思います。社内で派閥争いをしている暇はありません。上手に会社の将来のために奮闘されることを祈念します。

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