オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年11月15日レター)

【読者】食品会社で営業統括マネジャーをしております。営業パーソンの育成法でご相談があります。わが社には、流通業をお客様とする営業1課に5人の営業パーソンがいます。この中に優秀な女性営業がいまして、動画を利用して、売り場を上手に展開する情報をお客様に届けたり、お客様の相談に乗ってあげたりといったこまめな営業が受けて、一人で売り上げ全体の6割ほどを稼いでいます。

残りの4人の営業パーソンを鍛えてはいますが、なかなか思うように数字が伸びません。このままでは、もしかしたらこの女性の営業が他社に引き抜かれるのではないか、あるいは結婚して退社してしまうのではないかなどと、内心心配しております。

すべての営業パーソンに力をつけさせたいのですが、なかなか上手くいきません。宮内さんは、営業パーソンをどのようにして育成されていたのですか?営業を強く育てるためのヒントをご教示ください。

先輩の背中を見て疑似体験するのが長期的に伸びる育成法ではないでしょうか

【宮内】もし、この社員が非常に優秀な営業パーソンであれば、特別に処遇するべきだと思います。そうすれば、他社に引き抜かれる心配は減りますし、人生のステージが変わっても仕事を続けてもらいやすくなるでしょう。

しかしながら、この方が本当にスーパー営業として価値ある働きをしているのかどうか、そこは仮説を立てて検証する必要があるのではないでしょうか。もしかしたら、この社員が担当する流通業のお客様は、営業成果を上げやすい構造になっているのかもしれないからです。

もしできるのであれば、担当を変えて他の営業パーソンにこの社員が持っているお客様を担当させるのも一案です。その結果、他の人が担当しても売り上げの6割を稼げるのであれば、この方はスーパー営業ではなかったと判断できます。反対に、他の人が担当して成績がガクッと落ちるようなら、本当のスーパー営業と考えてよいので、元の担当に復帰させ、給与体系を変えることを考えます。出来高で加算してあげて、わが社でずっと働いてもらえるような処遇をします。

また、残り4人の営業にも力をつけてもらうためには、スーパー営業を真似して見習ってもらう必要があります。スーパー営業に特別待遇を与えると同時に教育係もやってもらい、他の人々のレベルを引き上げるような環境をつくるのがよいと思います。営業が力をつけるには、座学ではなくてOJTが大きい。優秀な先輩の営業トークを聞いて吸収し、提案資料づくり、見積りの出し方を実地で覚え、駆け引きの仕方なども肌感覚で身につけていくものです。お客様から育ててもらって学ぶこともあります。

昔から結びつきの強いお客様に若い営業を担当としてつけても、その力があまり伸びることはありません。それよりも、先輩が難しい仕事に取り組んでいるところを見て、疑似体験して初めて力がつきます。先輩の背中を見て真似するのが長期的に伸びていく育成法だと思います。

次の講義を見る