オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2022年1月24日レター)
【読者】40代前半で、人材系の会社で働いています。20代で金融関連の会社から転職し、今の会社は2社目です。ベンチャーを立ち上げた旧知の友人から、転職して一緒に加わってほしい、と誘いを受けて迷っています。友人の会社はまだ小さいですが、僕はベンチャーの仕事に興味があり、やりがいがありそうに感じます。
その一方で、今働いている会社では、中間管理職としてマネジメントを任されています。若手と経営陣の橋渡しのような役割も期待されており、仕事は充実しています。あと5年ほど今の仕事を続け、実績を積んでから友人のベンチャーに転職するのがよいかもしれませんが、それでは50歳近くになってしまうので、ビジネスパーソンとして新しいことに挑戦するには気力体力のピークが過ぎてしまうような気もします。
20代、30代、40代、50代というそれぞれの年齢とともに、気力、体力、能力、経験などに応じた転職の判断があると考えています。いま移るか、数年後に移るか、その踏ん切りがつけられないでいます。宮内さんは、40代から50代が最も脂がのっていた時期だったのでしょうか? ビジネスパーソンの全盛期とは何歳くらいなのでしょうか。年齢とキャリアの関係について、宮内さんのお考えをご助言いただければと思います。
熟慮した上で、思い切って決断するしかありません
【宮内】ご質問者にとって一番大事なことは、友人のベンチャー企業の事業内容と将来性について、マクロ観を持って勉強することだと思います。今後成長が見込める事業なのか、業界の中でどんな存在なのか、10年後、20年後の見通し、自分が入社したらどのような役割を果たせるのかなど、さまざまな観点で考える必要があります。
その上で、このベンチャーは見込みがあって自分の役割も十分あり面白そうだと思えば、迷わず移られるべきでしょう。逆に、将来性について確信が持てないと判断するのであれば、現在の会社で仕事を続けられるのがよいのではないでしょうか。
今の会社で5年ほど実績を積んでから移るという選択肢は、私はないと思います。5年後にご友人の会社が存続し続けているなら、企業として成長しており、もはやご質問者の力はなくてもやっていけるようになっているのでしょう。よく見極めたうえで、移るなら今しかありません。移らないと決めたなら、今の会社で上を目指していくのが理にかなった決断だと思います。
50歳になって転職できる人というのは、確固とした専門知識が身についている人です。年齢とともに体力は落ちていきますが、能力と経験は上がります。ビジネスパーソンの全盛期は何歳か、とのご質問については、役割のレベルによるとお答えします。
たとえば、部門の営業パーソンとしてバリバリやりたいということでしたら、その人の全盛期はおそらく30代から40代であると思います。経営層として組織を動かしたいのであれば、豊富な経験がなければ難しいでしょう。大きな組織であればあるほど、複眼的に物事を見極めて判断することが必要となるからです。ビジネスパーソンの全盛期は、仕事の役割と組織の大きさによって変わるということです。
ただ、これは一般論で、一人ひとりの働き盛りはその経験、事業の内容により全く異なるのでしょう。いつ頃が働き盛りかなど考えて仕事をする必要は全くありません。そんなことは考えず、今できるだけのことを全力でしてほしいと思います。
長い人生の中で、このような二者択一を迫られることは常にあり得ることです。熟慮した上で、思い切るしかありません。熟慮をして決断し、自分が決めた道が正しかったと思えるように、頑張っていただきたいと思います。