職場でも学校でも、人間があるグループを組織している場所に行くと、「みんないい人なのに、あいつさえいなければ……」と、必ず1人、「イヤなやつ」がいると思いませんか。職場で部署が変わっても、新しい環境でも、住まいの近所にも、必ず「イヤなやつ」がいるのは、なぜなのでしょうか。脳科学の視点から分析してみましょう。

職場のイヤなやつ7つのタイプ

「どんな職場にも、少なくても1人は『イヤなやつ』がいる」という意見を聞くと、「うん、そうだよね」と賛同する人は多いのではないでしょうか。きちんと調査したものではなく、あくまでも大勢の人の経験から導き出さされたものですが、弁護士の後藤千絵氏は、そうした職場のイヤなやつを次の7タイプに分類しています。

① 「悪いのは、すべて他人のせい」:自己正当化タイプ
② 「何でも自分の思い通りにしたい」:自己中心タイプ
③ 「もっとほめてほしい! もっと認めてほしい」:「かまってちゃん」タイプ
④ ストレスは「他人にぶつけてしまえ」:「八つ当たり」タイプ
⑤ 「他人のミス」は絶対に許せない:「完璧主義者」タイプ
⑥ あいつより「自分のほうが上だ」:「嫉妬メラメラ」タイプ
⑦ 「弱い者いじめ」大好き:「サディスト」タイプ
(後藤千絵・著『職場の嫌な人から自分を護る護身術』)

このように並べられると、自分がイヤだと思ってきた人も、この内のどれかに当てはまりそうです。

しかし、見方を変えれば、イヤだと思っていた人の評価も変わります。自己正当化タイプの人は、自分が責任を負うのを極端に怖がり、いつも内心がビクついている、単なる気の弱い人なのかもしれせん。自己中心タイプの人は、自己実現に徹底的にこだわった、成長意欲が高い人ということができるかもしれません。だから、いくら自分にとっては“イヤな人”と思っている相手であっても、その周囲には気の合う仲間がいるのだと思います。

では、職場におけるイヤな人がどうして生まれてくるのでしょうか?「社会的アイデンティティ理論」に基づいて考えていきましょう。

これは心理学者のH.タジフェルとJ.C.ターナーによって提唱された理論で、所属する集団のメンバーである自分への肯定的な評価を得るために、「外集団」と比較し、「内集団」を優位に位置付けようと動機付けることによって、内集団びいきが生じるのだ、とする理論です。ここで言う内集団は自分が所属している集団のことであり、自分が所属していない集団が外集団になります。簡単に言うと、仲間内か、そうではないグループかということです。

2024年の7月から9月にかけて、フランスのパリでオリンピック・パラリンピックが開催されます。日本選手が出場する競技がテレビで生中継されると、日本中で大勢の人が観戦しながら一生懸命に応援します。その選手と親しいわけではなく、話したことが一度もないのにもかかわらずです。それは、選手が同じ日本国民という内集団に属しているからであり、社会的アイデンティティ理論で言う内集団びいきが発生するからなのです。