オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年6月21日レター)
【読者】居酒屋を数店舗運営しています。営業を自粛したり、酒類を出す時間を減らしたり、たいへんな一年間でしたが、助成金をもらいながら何とか続けています。
以前からクレーム客に頭を悩まされてきましたが、昨年からコロナ禍のせいか悪質なクレームの件数が増えています。どの店でも二日に1〜2件、対応に困るクレーム顧客が出ています。たとえば、「つまみの味が気に食わない」「従業員の接客の態度が悪い」「突き出しはいらないからその分値段を下げろ」「店内に流している音楽が好みに合わない」など、言いがかりとも思えるようなクレームが増えているような気がします。
特に、酒に呑まれて従業員をいじめるような陰湿なクレームが続くとメンタルをやられる者が出て、欠勤が増えたり、さらに接客の質が下がってしまったりして、運営に支障が出ることもあります。馴染みのお客様を大切にしたい一方で、一定の率で必ず出てしまうモンスター顧客の取り扱い方について、宮内さんならどんな風に考えられますか。
従業員が心理的負担を負わないように教育し、「モンスター」には責任者が適切に対応しましょう
【宮内】コロナの影響で、今は世の中のイライラが募っており、それが「モンスター」となって現れているのかもしれません。上から目線ではありませんが、こうした行動でしか“ウサ”をはらせない立場の人たちであることをよく理解するよう、部下の方々に話すことから始めてはいかがですか。まずは、自身のイライラをこちらにぶつけるしかない弱さであり、お客さまたちも辛いのだろうと受け止めて、悩まずに淡々と仕事をこなせば良いという従業員教育を徹底されてはいかがでしょうか。
もう1つは、モンスターが出たときには、店長などの責任者がすぐに対応する体制をつくることも重要です。現場の担当者に負担がのしかからないようにしてあげるのです。コロナによって人々の不満が増幅し、世の中の状況がなかなかよくならない中で、不満をぶつけようと思ったらいくらでもできるわけです。特に飲食店はその標的にされやすいので、メンバー全員でそれを共有することが大切です。その上で、対応に困ったら迷わず店長に知らせるといったルールを従業員とよく話しておくことが必要なのではないでしょうか。
欧米では、酒に酔って難癖をつける客は最悪のマナーと見なされます。日本は、酔っ払いに甘いところがあって、酒の席のことだから、今夜は無礼講だから、などと言いますが、これは日本文化のよくないところだと私は思います。
馴染みのお客さんを大切にする一方、悪質なクレームには、相手が誰であっても丁寧に、かつ毅然とした対応に徹するといったように、割り切って考えるのがよいのではないでしょうか。