オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年12月13日レター)
【読者】わが社では家電品の製造を手掛けています。コロナ禍で注文が減り時間ができたので、この機会にお客様の声をもとに自ら商品を開発しました。この商品を取り扱ってもらえるように流通業者に持ち込んだところ、販売力のある系列メーカーにOEM生産をしてほしいと提案されました。
魂を込めて作り上げた自社開発製品です。わが社の製造物として販売したいと願っています。この製品がかわいいのです。わが社の名前でデビューさせてあげたい。これまで下請けという位置づけで、さまざまな製品を受注してつくってきました。下請けとして実績をつくれてきたことはありがたいことです。しかし、いつまでもこの状態を続けていていいかといえば、わが社は注文を受けるだけの不安定な存在にすぎません。
全国規模の販売力がなくても、わが社が自信をもって作り上げた新商品を、できれば自社の名前で売り出したいです。OEMを受け入れるべきか、自社で売るか。宮内さんならどう考えどうされるでしょうか、教えていただけたら嬉しいです。
迷うことなく、販売は専門性のあるところに任せるべきと考えます
【宮内】自社の名前で自社製品を売り出したいというご質問者のお気持ちはよく理解できます。しかしながら、その上で、もう一度初心に戻り事業の本来の目的を考えてみますと、わが社の名前で商品を売ることではなく、いいものをつくってより多くの消費者に買っていただくことではないでしょうか。
OEMにすれば、販売者はその道の専門家として能力を駆使するでしょうから、何倍もの数を売ってくれる可能性があります。一方で、自社で売れば販路が限定され、少ししか売れないかもしれません。専門家に頼めば何倍も売ってくれるとなると、答えは明白で、躊躇されることはないと思います。
販売する側の立場にたってみますと、OEMで大量に売れた場合、製造している会社が非常に重要なパートナーとなります。そう考えますと、いいものをつくっている限り、製造者が一番強いということになるのです。いいものをつくる技術があればそれを存分に生かし、販売は専門性のあるところに任せる。バリューチェーンの観点からも、この判断は間違っていないと思います。
下請けであろうと、販売業者が売りたい商品を製造する能力がある限り、強い立場が維持できるはずですし、ほかの販売業者も触手を動かしてくるでしょう。前途は広がるのです。