オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年12月6日レター)
【読者】中堅商社で秘書室長をつとめています。部下たちのモチベーションが低く、どうしたら秘書の仕事にやる気と問題意識をもって取り組んでくれるのか、苦心しています。
役員や部長職のスケジュール調整・管理、会議室の予約、来客・電話・メール対応など秘書の仕事内容は多岐にわたります。地味なサポート役ではありますが、役員秘書を経験すれば役員の仕事ぶりを近くでつぶさに見れるのでたいへん勉強になりますし、会社の機密に触れることも含まれる非常に大事な職務だと私は考えています。
しかしながら、部下たちは決まりきったことしかやらず、これまで通りのスケジュール管理やテンプレート通りの文書作成をこなすだけです。私から指示されて動くにすぎません。自分たちの気持ち一つで、どうすれば上司が快適に動きやすくなるのかを工夫して提案したり、新しいことを学んで取り入れたり、頭を使うことはさまざまあるのですが、そこのところを指導してもなかなか意識が変わってくれません。
宮内さんは大勢の秘書を間近に見て指導してこられたと思います。宮内さんは、どんな風に秘書を育成されているのでしょうか? 指示待ちの部下はどう変えたらいいでしょうか。ぜひご教示ください。
秘書業務は人事ローテーションの一環と考えてはいかがでしょうか
秘書業務は非常に大事な職務であり、なおかつ極めて特殊な専門性の高い仕事なのではないかと考えています。
ご質問者は、秘書の中でもプロの秘書室長であるために、部下にも自分と同じようにプロフェッショナルな意識と専門性を持ってほしいと望んでおられるようですが、それは少しレベルの差がありすぎるように感じます。おそらく、サポートするスタッフとの間で知識や経験のレベルが違いすぎて、彼らは何をしたらよいかよくわからずに、言われたことだけをミスなくこなすことに意識が向いているのかもしれません。
【宮内】多くの会社では、プロフェッショナルな秘書は置かずに、人事異動で2〜3年の間、経験のために秘書をつとめるのが実情ではないかと推察します。私の正直な感覚をお伝えしますと、もし、将来わが社のエリートになるような優秀な人材が秘書として私についてくれたとしても、通常はプロの秘書に育てようとは思いません。
逆に能力を発揮してプロ秘書への道を歩み始めると、戸惑うと思います。経験のため2〜3年間秘書として勤めてもらったら、早く一般の事業部門に返してあげないと、本人のキャリアや将来の可能性を狭めてしまうのではないかと心配になります。それほど秘書は専門性と特異性のある仕事ではないでしょうか。
このように考えますと、特殊な業務である秘書業務に限っていえば、プロフェッショナルな人材は、社内に数人育っていればよいのでしょう。プロフェッショナルな秘書室長がスタッフを仕切るのが自然な考え方なのではないでしょうか。目先を変えて、スタッフには人事ローテーションの中で役員の仕事ぶりを傍で見て貴重な経験を積ませるという考え方も、選択肢に加えてはいかがでしょうか。