オリックス シニア・チェアマンの宮内さんが3分間レッスンの読者のみなさまの質問にお答えします。(2021年8月30日レター)

【読者】IT関連のスタートアップ企業でHRマネジャーを勤めております。業務内容も業務量も急拡大していますので、常に人手不足の状態に陥っておりまして、優秀な人材をどんどん引っ張ってきてキャリア採用することが私の任務になっています。

まずは、多様な言語に対応できるプログラミングスキルや、流行分析能力をもつ人材は常にほしい人材です。さらに、欲を言えば、資料作成能力、プレゼンスキル、コミュニケーションスキル、英語力などのスキルがある人材であれば、のどから手が出るほどほしい人材です。しかしながら、まだわが社の知名度が低いために、ほしい人材が来てくれることはほとんどなくて、この成長機会にどうしたらよいか、思い悩んでおります。

ITエンジニアに特化した人材データベースからくまなく該当者を探しているのですが、面接まで至る人が少なく、内定を出しても辞退されてしまうケースがほとんどです。

当社の知名度問題、採用単価の問題、応募者から見た当社の魅力をアップさせることなど、やらなければならないことは頭では理解できているつもりですが、これを実現するには時間がかかります。

ITエンジニアの有効求人倍率が5倍を超えるという厳しい競争条件のなかで、われわれのようなスタートアップ企業が優れた人材を獲得するには、広い視点でどのように考えたらよいでしょうか。宮内さんにご教示いただけましたら幸いです。

優秀なIT人材は海外に求めるべきです

【宮内】優秀なIT人材を採用されたいとのこと。これはなかなか難問です。日本で優秀なIT人材を探そうと思うと、もともとのマーケット人材は多くない上に、コストも高くついてしまいます。超破格な待遇を出せば、希少な優秀人材を獲得できるかもしれませんが、それでは会社がもたなくなってしまうでしょう。蛇足ですが、今の日本の教育システムが時代の要求に全く合致していない典型的な事例です。企業の求めるレベルの人材が、国内には今いないのです。

このように、狭くてコストが高い労働市場で人材の取り合いをしても仕方がないのではないでしょうか。知名度が低いスタートアップ企業であるならばなおさらのこと、IT人材は海外に求めるべきだと思います。

私が知る限りでは、優秀なIT人材をインドや東南アジアの現地へ行って採用し日本で就職してもらう、あるいは子会社を現地に設立してシステム開発を任せて成功している日本企業は多くあります。海外の人材であれば、英語力は当然のこと、資料作成能力、プレゼンスキルも十分に備わっています。

その代わり、今後日本企業の人事マネジャーには、海外の労働市場から優秀な人材を確保する能力が問われるようになるでしょう。コミュニケーションの取り方も含めて、採用した海外の人材に、自社の意思に沿って働いてもらえるような仕組みをつくるのが、採用責任者の最も重要な仕事の1つになると思います。

人口減少が急速に進む国内労働市場だけを想定していては、競争力を高めることは難しくなるのではないでしょうか。

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