本連載では、“伝説のトップコンサルタント”堀紘一氏に、メルマガ編集チームがまとめたリーダーたちの悩みをぶつけ、ズバッと斬っていただきます。(2024年3月4日レター)

──正月早々の能登半島地震は想定以上の被害をもたらしたと言われます。今後さらに首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生が国(中央防災会議)から警告されています。災害を避けられない時代に、ある程度の資産を持つ人はどう備えたらいいのでしょうか。かつて堀さんからは「海外脱出に備えて金(きん)を持っておくべき」とうかがったように覚えています。今ならどうアドバイスされますか。

【堀】昔から資産三分法と言われているように、不動産、債券、株式などをポートフォリオとして分散して持つことが資産保全には効果的だという常識がありました。しかし、私は、いまの状況下では違う意見を持っていて、資産家の資産管理で一番良いのは株式だと考えています。

現在、日本では約3000社が株式を上場しています。そして、日本の株はもちろんのこと、アメリカの株もヨーロッパの株も、ネット証券で簡単に買うことができます。これから伸びる良い会社を選んでさえいれば、有効な手段となるはずです。

特に手堅い分野を二つ挙げるとすれば、一つ目は半導体関連会社です。あらゆる産業のIT化が進み、ますます半導体が使われるようになり、ますます半導体が精密化していきます。将来、半導体を使わなくなるとか、安価な半導体だけでいいという時代が来ることはあり得ません。そう考えますと、半導体関連の有望企業というのが、資産管理上一番良いのではないでしょうか。日本の場合、半導体製造の会社ではなく、半導体製造装置メーカーと半導体の原料メーカー、たとえばフッ化水素メーカーなどが有望です。

二つ目は、製薬会社です。半導体関連が“攻め”の分野とすれば、製薬関連は“守り”の分野といえるかもしれません。ほとんどの人は、健康で明るく長生きしたいと望んでいるはずです。そのためには、アルツハイマーの治療薬が必要になりますし、不眠症に悩む人には依存性が低い入眠剤が必要になるでしょう。この先、医薬品がいらなくなるということはあり得ません。

コロナ禍を経て、昨今は、検査キットを使用して自分で病気の診断ができるようになりました。また、血液や尿を送ると、病院に行かなくても診断が受けられ、薬が送られてくるというシステムが発達しています。血圧や血糖値も自宅で測れます。医学も薬学も検査法も、めまぐるしく進化していきます。もちろん、業績が良い時も悪い時もありますが、ファイザーや武田薬品がなくなることは考えられないです。

私は、半導体関連、医薬関連の株式を買うことは、不動産を買うよりも安全だと考えています。もし、それでも不動産を買うとすれば、ニューヨークならセントラルパークイースト周辺、ロンドンならハイドパーク周辺、パリならシャンゼリゼ周辺、東京なら麻布か松濤周辺でしょうか。一等地の限られた区域であれば、好不況に左右されることが少ないからです。

日本国内では、北海道のニセコと熊本も候補になるでしょう。ニセコは世界でも有数の良質なパウダースノースキーが楽しめるリゾート地として人気があります。中国やオーストラリアの富裕層がこぞって買いたがっているため、地価が上昇しています。雪質が良いと、デラパージュのような難易度の高いスキーの技術も楽にできるので、スキーが上手くなったような気がして楽しいものです。

また、台湾の半導体メーカーTSMCが熊本県菊陽町に建設を進めている第1工場から、この年末には製品出荷がスタートする予定です。熊本県内には第2工場の着工も控えており、九州は新しいシリコンアイランドとして期待されています。巨大な工場の周辺には、素材産業や物流施設などの建設ラッシュが起きますので、人が集まります。人が集まると、間違いなく土地の値段が上がりますから。

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