本連載では、“伝説のトップコンサルタント”堀紘一氏に、メルマガ編集チームがまとめたリーダーたちの悩みをぶつけ、ズバッと斬っていただきます。(2023年8月7日レター)

――日本では2月と8月は営業の数字が上がらないとよく聞きます。数字が上がらないときにこそ、経営者がやるべきことがあれば教えてください。

【堀】昔から「ニッパチ景気」などとよく言われます。2月は、年末年始の反動で需要が落ち込み、また疲れが出て心理的にも人々が節約モードとなる月です。8月は、お盆休みが入りますし、そもそも暑すぎて調子が出ません。2月と8月はそういう環境だから、頑張っても成果が出にくいというわけです。

そこでひとつ提案です。例えば8月の酷暑で調子が出ないのなら、心も体もゆっくり休めてはいかがでしょうか。人間ですから、どんな時も100%フル稼働を続けていると、いつか壊れてしまいます。こんなときは思いきって2週間くらい休みをとって少し気を緩め、体を楽にするのも一つの方法です。

現代人は緊張の連続ですから、気持ちを緩めてあげることは大事です。仕事に戻ったときに良いアイデアが出て、それが業績を上げることに役立つのではないでしょうか。効果を上げるためには、旅をして日常を離れ、別の環境に身を置くことをおすすめします。行き先は涼しくて気持ちが良いところでもいいですし、発想の転換で南の島を訪れ、アロハシャツに身を包み、終日海岸で過ごすのも非日常の世界が楽しめます。

2月だとどうでしょう。スキーがお好きなら北海道に足を運び、しーんとした雪の中でスキーを滑らすととても良い気分転換になります。なぜ北海道なのかというと、世界でも有数の良質なパウダースノーが楽しめるからです。水分を多く含む上越や信州の雪質ではパラレルターンが上手くできなくても、北海道の富良野やニセコではカッコ良くできて、自分がスキーの名人になったような気持ちになります。ついにスキーの才能を開花したなどと錯覚して心躍ることは、楽しい体験ではないでしょうか。誰にも迷惑をかけず、褒められるようなこと、得意になれるようなことを体験すると、ドーパミンが出て活力が増します。英気を養い心身ともに元気になって戻ってくるのは、非常に良いことだと思います。

野球の先発投手だって、初回から100%力を出していたら3回ほどでバテてしまいます。先発投手の役割としては、1番から4番バッターを力を込めてピシッと押さえたら、下位打線で力を抜かなければ、7回や8回まではもたないです。プロ野球投手の下位打線に対する時が、ビジネスマンで言うとニッパチなのではないでしょうか。

さて、もうひとつの考え方も紹介しましょう。これは私が第一線のコンサルタント時代に使っていた裏技です。8月、お盆休みの時期に、まだあまり親しくなっていない経営者のアポをとるようにしていました。普段はアポ入れしても多忙を理由になかなか会ってもらえないのに、お盆だと時間が空くからか意外と簡単に会ってもらえるのです。コンサルティングの発注をしたことがない新規のお客様に、お盆の時期に初めてお会いするという裏技を使っていました。

お盆の時期は心に余裕があり、普段できないような話をする機会でもあります。ビジネスにはいろいろな攻め方があり得るので、「ニッパチ」には普段できないことをやってみるという発想が良いと思います。

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