本連載では、“伝説のトップコンサルタント”堀紘一氏に、メルマガ編集チームがまとめたリーダーたちの悩みをぶつけ、ズバッと斬っていただきます。(2024年1月8日レター)

──2024年は、11月のアメリカ大統領選をはじめ、今後の国際情勢を左右する重要な国々の国政選挙が予定されています。1月は台湾の総統選、3月はロシア大統領選、ウクライナ大統領選、4月は韓国の総選挙も注目されます。民主主義国家vs覇権主義国家の対立が深まり、世界の極右化や分断も懸念されます。国際派として知られる堀さんの見立てを教えてください。

【堀】2024年の世界情勢を見る上で一番重要なカギを握るのは、やはりアメリカ大統領選の行方でしょう。現段階では、81歳の現職バイデン氏と77歳の前職トランプ氏の対決となりそうです。このまま民主・共和両党の中から、両者を打ち破ろうという若くて元気な候補者が出てこないのでは、アメリカの活力はどうなっているのかと言いたくなります。人としての品格に欠けるトランプ氏が再び大統領になるとしたら、世界秩序はどうなるのか、非常に懸念されますね。

アメリカで最貧困地帯と言われるのはウェストバージニア州で、皆さんもご存じの歌「カントリーロード」で有名なところです。ウェストバージニア州は首都ワシントンの隣にあり、メイフラワー号に始まるアメリカの歴史の中でも古くから栄えた地域で、かつては良質の石炭が多く産出されていました。

しかし、その後、炭鉱の町はどんどん寂れ、仕事がなく若い人々はニューヨークやフィラデルフィアに出てしまいます。60代以上が人口の大半を占めていて、住民のなんと8割が生活保護を受けており、麻薬の普及率も高く、町の多くは廃墟と化しています。

じつは、こういう町がトランプ氏の票田なのです。プア・ホワイトと呼ばれる白人の貧困層は、安い外国製品やメキシコから押し寄せる移民のために職業を奪われたと結論付けています。アメリカ・ファーストの政策によって過剰な輸入や移民や麻薬密輸を排除し、プア・ホワイトを助けてくれるという理由で、トランプ氏を支持するわけです。

長期化が懸念されているイスラエルとパレスチナの紛争は、背景に長い間の宗教的民族的抗争があり、ヨーロッパとも因縁の歴史があり、様々な要因が複雑に絡み合っているため、解決するのは非常に難しい。私の結論は、パレスチナの土地を二分してパレスチナ国家とイスラエル国家をつくり、国境線を引いて上手に管理する以外に解決の道はないと考えます。

ネタニヤフ首相は聞き入れないでしょうが、イスラエル6対パレスチナ4といった割合で土地を分けること。パレスチナも納得しないでしょうが、10年間は小学校、病院、住宅などを建て直す援助を行い、狭くても自国の土地が確保できることで双方ともに折り合ってくれ、という妥協案を納得させる以外に解決策はないです。

それができるのはアメリカだけですが、かつては世界の警察と言われたアメリカも、今そのリーダーシップがとれるか否か。イスラエルは2000年以上にわたって世界各地で虐げられてきた民族の歴史があるため、過激派組織ハマスとは関係のない多くのパレスチナ人が命を落とそうが、国際世論が反発しようが構わずに、自らの命は自らで守るという信念は揺るがないでしょう。

そして、ロシア・ウクライナ戦争は完全に泥沼化しています。3月にはプーチン氏がおそらくはニセの選挙結果を発表して大統領を継続する一方で、ウクライナは武器弾薬の援助が乏しくなり、決め手がない。それでも、いまロシアと政治的に妥協して休戦を受け入れることはないでしょう。ゼレンスキー大統領は、命がけで国を守ろうと立派にふるまっていますが、国民がどこまで耐えられるか、懸念は続きます。

台湾や韓国の選挙も、結果の如何で世界情勢に大きな影響を与える可能性があります。こう考えてくると、2024年の世界は混とんとしていて、何が起きるか、予測できないというのが現実です。数えきれない変数が複雑に絡んだ方程式のようなもので、これを解くのは神様でなければできません。2024年はそんな状況が続くでしょう。

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