上司との関係はうまくいかず、相談する相手も見つからない。会社で孤独を感じながら毎日の仕事をこなす。会社に行くのが辛い。
心が折れそうな状態を、どう立て直したらよいのか。元結不動密蔵院の名取芳彦住職、著作家の永江朗氏に相談しました。
(内容・肩書は、2017年9月18日号掲載時のままです)
Q1.なぜ、私と上司の関係は冷え切ってしまったのか?
冷え切ってしまった関係に悩むということは、きっと「もう少し密にコミュニケーションを取りたい」という気持ちの裏返しなのだと思います。
仏教の世界に、優しさを表す「慈悲」という言葉があります。人はどういうときに他人に対して優しくできるのかというと、仏教では、自分も相手も同じであるという「共通項」に気がつくことだと説いています。
私たちはそうした共通項の効果を、実は昔から上手に利用してきました。あまり親しくない人と会ったときに、とりあえず「今日は暑いですね」と水を向けてみるのは、まさしく共通項を示す行為です。
あなたがもし上司との関係改善を望むのであれば、その上司との共通項を探してみるのが早道なのかもしれません。
私が家内と結ばれたときも、共通項がものを言いました。私は家内にちゃんと“御”の字を添え、“おっかない(御家内)”と呼んでいるのですが、出会った頃のおっかないはテニスを趣味としていました。一方、私はおっかないと違って、まったくの未経験。彼女と仲良くなりたいがため、私は内緒でテニススクールに通い、そこそこ見られる腕前を養ってからテニスデートに誘ったのでした。今にして思えば涙ぐましい努力ですが、これは決して難しいことではありません。上司と同じものを食べるだけでも、「今日のランチ、すごく美味しかったですね」と、ささやかな共通項が生まれます。相手が読んでいる新聞や本を目ざとくチェックしておくのもいいですね。
大切なのは、相手に対して心を開くこと。こっちが鎧を着て現れたら、相手だって警戒して鎧を着て備えるのは当たり前なんですよ。