人間は、自分の力ではコントロールできない不思議な心の動きをする。日常に数多く現れる不条理な現象や言動はなぜ起こるのか。
人生を生きにくくする世の不条理の数々に、どう対処していけばいいのか。哲学者と僧侶が、解決への道を示してくれます。
(内容・肩書は、2017年9月18日号掲載時のままです)
Q1.不倫する人は、なぜ不倫するか?
そりゃバカだからですよ。後難を恐れず欲を優先してしまうから。酔ったらバカになるでしょう。金をたくさん持ったら、人が寄ってくるでしょう。そんなことがきっかけでやってしまうんだよ。
人間の共同体には、「これを破ったら人間じゃなくなる」というタブー(禁忌)が3つあります。人肉食、殺人、近親相姦。なぜか。簡単だからですよ。自分のすぐ隣に、食料とセックスの対象があって、寝込みを襲えば簡単に殺せる状況にある。簡単だから渇望も自然に流れ出る。とめどもない快楽になるでしょう。だから禁じた。そうしないと共同体はすぐ崩壊してしまうんです。でもね、人肉食も殺人も近親相姦も、歴史上、無数の例がある。ほとんどの共同体でタブーとして固く禁じられているにもかかわらずにね。
それに比べたら、不倫のタブーなんて全然大したことない。だから、不倫する人は不倫するんでないの?
哲学者で言えば、カントは不倫を批判し、ルソーは不倫した。マルクスなんて、妻が雇っている家政婦に子どもを産ませて、それをエンゲルスの子として育てさせた。ひどいもんだろ。倫理観のひとかけらもないよ。そこは倫理学の講義をずっとしてきた僕とは違うな(笑)。