トップの成績で頼りになる部下が、成績で負けている部下に攻撃的な言動を繰り返している。何か対策を打たないとチームが崩壊しかねない状況を打開し、攻撃的な部下の考え方を変える質問の一つが「あなたの成果をチームの成果にするためには?」。部下の心を上手に操る裏ワザを解説します。

時代は、ファクトリー型組織からワークショップ型組織へ

部下Aは営業成績が抜群で、チームの売上目標達成を支える存在だ。一方、攻撃的な面もあり、あまり数字を取れない同僚に対して強く当たっているようだ。上司として、何らかの対策を取らないといけないだろう——。

ここで一度、改めて考えてみましょう。なぜ上司のあなたは、同僚に攻撃的な態度を取る部下を戒めなければと思ったのでしょうか。

「ハラスメントはいけないから」「弱い者いじめは良くないから」という明白な倫理的理由はもちろんあります。一方で、この問題には、組織論の観点からアプローチすることも可能です。

これまでの組織は、管理者が構成員を管理し、同じ職種の人たちでチームを構成させ、各チームにタスクや数値を分担させることで、全体目標の効率的な達成を目指してきました。私は、このトップダウン方式の組織形態を、ファクトリー型と呼んでいます。

ファクトリー型組織では、メンバーの関係性の良し悪しはチームのパフォーマンスを左右しません。分業体制をとるファクトリー型組織においては、メンバーの関係がギクシャクしていても、一人一人が自分の業務を正確にこなしている限り、チーム運営に支障はありません。

ところが、現代はVUCA(ブーカ:Volatility 変動性、Uncertainty 不確実性、Complexity 複雑性、Ambiguity 曖昧性)の時代だと言われるようになりました。ビジネスにおいても、外部環境は目まぐるしく変わり、それまでのルールや定説が頻繁にひっくり返り、一度確立した競争優位性が次の日にでも失われかねない事態になっています。

この極めて流動性の高い世界で生き残るために提唱された新たな組織形態が、ワークショップ型組織です。

ワークショップ型組織では、刻一刻と変化する世界に対処するため、現場が自ら問題を見つけて自分たちで問題解決を行います。「やるべきこと」も「やり方」も、自分たちで対話しながら探し出す必要がありますから、メンバー間のコミュニケーションが何よりも重要です。

同僚に攻撃的な態度を取るメンバーは、組織のコミュニケーション不全の原因になり、引いては組織を変化への対応がしにくい集団に変えてしまいます。攻撃的な部下の存在が、チームの弱体化に直結する時代になりつつあるのです。