日頃から効率を上げ、結果につながる努力を続けているMVP社員の「10倍速仕事術」。住宅展示場の店長は、入社16年目にして、ついに社内全国1位の売り上げを達成した。この快挙の秘訣がなんと、時間の使い方なのである。(内容・肩書は、2014年2月3日号掲載時のままです)

“全国一”支えた三つのツール

消費税増税前の駆け込み需要を追い風に好調が伝えられる住宅市場。しかし、最前線では顧客獲得競争が激しく、一朝一夕には業績を伸ばせないのがこの業界だ。

そんななか、大和ハウス工業埼玉支社、上尾展示場の松浦力店長が快挙を成し遂げた。二〇一三年度上期(四~九月期)に、契約計上実績で約四億円を売り上げ、同社で全国一の座に就いたのだ。

「一般に、一人の営業が月に一棟売れるか売れないかという業界ですからね」と、当人も喜びを隠せない様子だが、この快挙の秘訣が、自身の工夫による業務管理、すなわち時間の使い方である。

「ツールは三つあります。ひとつは弊社が全社で活用しているD-SMART(勤態管理システム)、それからアナログの手帳、携帯のアラームです」

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入社一六年目。埼玉県中南部の同社支店七店を異動し、キャリアを積んできた松浦さん。上尾展示場の店長に就いたのは一二年の一〇月。三つのツールを駆使して、自らの仕事の仕方を変えたのは、それからだ。契約計上実績が格段に上がったのだ。

「店長になったことが大きい」と松浦さんはいう。「店長は、家族でいえば父親。自分が不甲斐ないと、家族たる部下を路頭に迷わせることになります」

それまでは、自分一人がノルマを達成できなくても、誰かが代わりに……と思う気持ちがどこかにあった。しかし、拠点の責任者ともなれば、毎月の目標を確実に達成していかなければならない。

「しかも、以前と違って管理業務が増えますし、部下の申し出への対処もあります。そのなかで、プラスαの行動をとって、目標に向かわなければなりませんから、時間の使い方を根本から見直す必要がありました」――店長の重責が、自分を駆り立てるモチベーションになったのである。

松浦さんが、時間の使い方を再考する際の柱となったのが、同社のD-SMARTである。これは、全社員がパソコンを通じて内容を共有できるスケジュール表だ。

ここを、どんな優先順位で埋めていくのだろうか。

「まず、①ご契約以降のお客様への住宅の引き渡しや地鎮祭。これは絶対の最優先です。次に、②月初に出る行動予定に沿って、拠点長会議や全体会議など社内・店内行事を入れ、③朝礼・夕礼で行うことや、自分でやっていこうと考えていることを記入します」

すると、わずかずつでもすき間時間があることが見えてくる。そこを、④新規顧客への電話でのアポ入れや、翌日の商談のための資料作成といった“探客”に使う。探客とは、誤解を恐れずにいえば将来の成約のための“種まき”だ。

「対象は主に展示場でコンタクトした来場者。それだけでも、新規客とのコンタクト数が格段に増えました」

当然、顧客の突然の訪問といったイレギュラーな予定も入るから、スケジュール表のメンテナンスは欠かせない。

このシステムでは、ほかの社員のスケジュール表にもメッセージを書き込めるから、上司や設計担当のスケジュール表で相手の空き時間を見つけ、時間を割いてもらうよう要請することもできる。

「ときには、私のスケジュール表を見た上司から、あのお客様を訪問するなら、この点に留意しろというようなアドバイスの電話がかかってくることもありますよ」

営業には心強いサポートシステムだと松浦さんはいう。かつて先を見るのもせいぜい一週間、場当たり的だった頃とは大きく変わり、顧客への対処を長期的なスタンスで考えるようになった。設計や経理などとの連携もスムーズになり、仕事を振り分けて、プラスαの自分の仕事時間を生み出すのにも役立っている。

「二十代の頃は、個人がプレーヤーとして特化していけば、何でも課題解決ができると思っていました。しかし、今は認識がまったく変わりました」

個人よりチームで。組織力を生かしたほうが、はるかに課題解決の幅は広がるという。