ビジネスにおいて必要なのは、思考する力や決断する力だけではありません。好奇心や探求心もまた、新しい商品やサービスを生むためには欠かせない資質。理系出身の技術者であり、自他ともに認める食いしん坊である堀埜さんには、長年にわたる疑問があったといいます。それは、世界三大料理に、なぜトルコ料理が入っているのかということ。経営戦略の基本ともいえる「仮説検証」の考え方とともに、実験データを用いて謎を解くまでのプロセスをご紹介します。

なぜ、世界三大料理に「トルコ料理」が入っているのか

今回は、少し寄り道をして、「世界三大料理」の話をしたいと思います。世界三大料理といわれて、みなさんはすぐに3つをあげることができるでしょうか。「フランス料理」、「中華料理」、そして「トルコ料理」です。

私は、ずっと疑問でした。なぜ、この3つなのか。

なぜ、イタリア料理ではなくフランス料理なのか。フランス料理は、そもそもイタリア料理の派生系です。世界中で食べられている料理といえば、イタリア料理のほうがメジャーなはず。

三大料理を決めた時代がナポレオンの時代だったから、という説を耳にしたこともありますが、定かではありません。宮廷料理だから、という説もありますが、それをいうなら、韓国料理だって宮廷料理です。

そして何より、なぜ、トルコ料理が入っているのか。その謎を解明するチャンスは、サイゼリヤの社長になった翌年、2010年に訪れました。

サイゼリヤでは、年に2回、海外での研修を行っていました。ひとつはアメリカでの定点観測で、毎年、ロサンゼルスの同じエリアと店舗を訪れます。

もうひとつは、年ごとに違うイタリアの地方を訪れ、日本ではまだ紹介されていないイタリアンの食材や料理に出合うための視察です。その視察旅行のついでに、イスタンブールを旅程に組み込んだのです。

イスタンブールに飛んで、世界三大料理の謎は解けたのか。現地で料理を食べて、すぐに違いに気づきました。味の「キレ」が、フランス料理や中華料理とは違う。料理の味が舌に残ることなく、すっきりと消えて、ほかの皿に手が伸びるのです。

世界三大料理の特徴、その答えは「酸」ではないのかという「仮説」が、すぐに頭に浮かびました。