月収40万の人が毎日1時間無駄にすると、時間泥棒の額は年間約60万円!重大な“生活習慣病”を生み出す、人間の奥底にある心理とその処方箋を“習慣化”の権威が解説。(内容・肩書は2014年2月3日号掲載時のままです)

「嫌われたくない」から一〇〇%無駄な飲み会にも参加

ビジネスマン一〇〇〇人アンケートの報告では(下図参照)、「一日の中で、時間を浪費してしまったと感じる」人の率は、年収額の高低にはあまり関係がなかった(平均六割以上)。

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これを年代別に集計すると、三十代が最多だったもののやはりそれほど大きな変化はなく、全世代とも六割以上だった(下図参照)。五人に三人は、日々、時間泥棒にあっていることになる。

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気になるのは浪費時間の内訳だ。全世代とも「長い打ち合わせ」「長い電話への対応」が断トツに多く、次いで「家族・友人との口論」「ネットでのニュース、SNSチェック」「ネットでのゲーム」が入った(下図参照)。

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なかでも特徴的なのは、他の世代に比べ六十代が最も「長い打ち合わせ」と「ネットでのニュース、SNSチェック」「ネットでのゲーム」を挙げる率が高かったことだ。六十代といえば、経営に携わる管理職層も多い世代だが、自力で時間のコントロールをしきれない会議や打ち合わせ、さらに、若い世代よりもやや経験と知識に劣るためかネットやSNS、ゲームに関しては時間管理にてこずっている様子だ。

アンケートでは具体的に時間浪費のシーンを自由回答してもらった。その内容などを踏まえ、習慣化コンサルティングの古川武士氏に時間泥棒の“正体”やその発生メカニズムの解説、打つべき対策を教えてもらった。

自由回答で目立った内容のひとつに、「付き合い酒」関連がある。「上司に『ちょっと、一杯どう』とお決まりのせりふで誘われ(最近はメール)、付き合いで飲み屋へ行くと、毎度『ちょっと』ではすまなくて……」(三十代男性)。

どうなるかといえば、「小遣いはなくなるし、翌日は二日酔いで仕事にならなかった」。仕事後のプライベートな時間と、翌日午前中の貴重な時間がつぶれたことになる。まあ、誰にも少なからず身に覚えのある話である。

「仕事を効率的にして、早く帰宅して、家族との時間や個人的な趣味の時間を増やしたい。ほとんどの人がそう願っています。しかし現実問題、それを実現できている人は少数派です。なぜか。自分がなんらかの理由で仕事に集中できない。まず、これがひとつ。もうひとつは第三者によって仕事の邪魔や横取りをされるケース。付き合い酒は、後者にあたります」(古川氏)

いわゆる飲みニケーションは以前に比べれば減ったと言われるが、なんだかんだと「ちょっと一杯」を週何日かする人は少なくないだろう。話す内容は、たいていはどうでもいいこと。内心、お金と時間の無駄だと思っているのに、居酒屋習慣は続いてしまう。

「実は、時間のロスだと思う半面、日常的にお酒を飲むことに本人が無意識にメリットを感じているから習慣化するのです。この場合、メリットとは、人とのつながりをより深められるということ。逆に言えば、誘いを断って人に嫌われるというデメリットを避けたいという心理が強いから、やめられないのです」(同)

興味深いのは、こうした付き合い酒(二~三次会含む)だけでなく、「週末ゴルフや、PC・スマホをつかったツイッター・フェイスブック・LINEといった仲間内での交流に多くの時間を割いてしまうのも同様に、嫌われたくない(孤立したくない)という深層心理が関わっている」(同)ことだ。

だから、人はしばしば誘いや頼まれ事を断ることができない。また、誰かからのメールや書き込みに即返信せずにはいられない。結局のところ、それは会社や仲間など所属する共同体で生きるなかで、「あいつは冷たいヤツだ」といった悪評価やレッテルを張られることを回避したいだけなのだ。

ところが、“絆”は保つことができる半面、ずるずると付き合ったばかりに本来自分がしたかったことができずに損した気分になる……という構図だ。

では、そうした“泥沼”に陥ったら、時間泥棒からの脱出は難しいのか。

「まず、自分自身を見つめて、人に嫌われたくないといった時間の浪費の根本原因が何かを探るのです。そして、自分にはそうした心の仕組み(欲求)があることをしっかり認識する。そのうえで、例えば飲み会に毎回付き合わないと本当に嫌われてしまうのか考えてみる。すると、幻想の不安に振り回されていたことに気付くこともあります。さらに、飲み会以外の方法で人とのつながりを維持・強化することができないか思案してみるのです。すると今度は、案外、お酒ではなくランチなどをともにすれば事足りることに気付く場合があります。人によっては、自分の時間の大切さを再確認することで、多少、人に嫌われてもしかたないと腹をくくって、酒やゴルフなどの誘いをきっぱりと断れるようになるケースもあります。よくないのは、自分の深層心理をよく確認しないまま、時間浪費となっていることをただストップすること。いずれ再発したり、別の浪費に変わったりするだけなのです」(同)

会議や打ち合わせも、◯分間と事前にかける時間を決めないまま始めると、つい相手のペースのまま長引くことがある。自分だけの都合でコントロールできない部分もあるが、相手のペースに寄り添いすぎてしまうことが多いのも、「一種の嫌われたくない心理」(同)だという。対策としては、上司との個別打ち合わせの場合、「この後、別件がございまして。お話のポイントはこういうことですか」などと話を一度整理すること。また相手が部下の場合は、打ち合わせしたい要点を事前に提出してもらえば短時間で済むという。

「ふだんから周囲に『あの人は忙しい人だ』というイメージを植え付けることで、付き合い酒の欠席などで多少の不義理をしても嫌われずに済み、結果的に時間節約にもなります」(同)