企業や部署を運営していくためには、数字の管理が不可欠。ところが、チームの数字に無頓着で、使える経費は何でも使う、売り上げを立てる意識も低い、そんな困った部下もいます。事業や数字の重要性を再認識させるためにも、時には「それは何に投資しているの?」と厳しく問うことも大切です。

経営データを開示すれば、数字を自分事と捉えやすくなる

あなたはいま、小学校5年生だとしましょう。どうやら最近お母さんが課長になったみたいです。それまではお寿司屋さんに行くと、「200円のお皿までしかダメ!」と言われていたのに、最近はウニも食べさせてもらえるようになりました。あなたは子ども心に、「そうか、お母さんの給料が増えて、うちは少しお金持ちになったんだな」と思いました——。

本来であれば、会社も家庭と同じです。親の収入の変化が子どもの衣食住を直撃するように、会社の業績の増減は社員の給料の多寡に直結します。さらに会社の場合は、社員一人一人のパフォーマンスが会社全体の業績を決定づけますから、両者はひとつの円環を成し、切っても切れない関係にあるわけです。

しかし、会社が一定以上の規模に拡大すると、会社全体の今期の収益目標、隣の事業部が現時点で上げている利益、非上場企業の場合は決算に至るまで、多くの経営データが一般社員からは見えにくくなることが多いでしょう。

お金の全体像がブラックボックス化されると、会社と社員が経済的な相互依存関係にあるという事実は、急速にリアリティを失います。社員の視野が自分の周囲数メートルの狭い範囲に限定されてしまえば、会社・事業・部署レベルでの収益やコストが自分自身と直結した問題であることを想像できなくなってしまうのです。

ですから、こうした数字を「自分事」として部下に捉えてもらうためには、経営データをできるだけ開示するのが手っ取り早い方法です。私が代表取締役を務める株式会社MIMIGURIでは、売上げや利益率、職階ごとの給与水準や平均給与、銀行残高や借入金まで、すべて社員全員で共有しています。