与えたノルマを達成してからというものの、明らかに仕事に力を入れなくなった。目標達成後も熱心に仕事に取り組ませるためにはどうすればいいでしょうか。鍵を握るのは目標をどう設定するか。「3年後や5年後、どうなりたい?」の一言が、飛躍的に部下を成長させる理由とは。

目標を達成したはずの部下にモヤモヤしてしまう理由

期初に立てた目標を部下が達成するのは、間違いなく喜ばしいことです。でも、「もう四半期の営業ノルマをクリアできたから、残りの1カ月は手を抜いてもいいや」と部下が考えていたとしたら、どうでしょうか。

見事ゴールテープを切ったマラソン選手に対して、コーチが「あと1キロ走り続けて」と声をかけるのがナンセンスなように、上司である自分も納得して設定した目標を部下が達成したとしたら、目標以上の成果を要求するのは、マネジメントとして間違っています。部下に矛盾したメッセージを発信していることになります。

それにもかかわらず多くの上司は、「ノルマを果たしたからといって努力を止めるのは違うんじゃないか」「できるだけ大きい成果をあげようと頑張り続けるべきじゃないか」と、釈然としない気分になってしまうと思います。

なぜでしょうか。「数字を達成しただけで満足していたら、社会人として、人として成長できない」「本当に大事なのは会社が長期的に成長することで、毎月の目標はあくまでも通過点に過ぎない」「さらなる成長を楽しめる組織風土を醸成すべきだ」――上司のあなたは、目先の業務目標を達成するだけでは本当はダメだということを、心の内で知っているからです。

別の言い方で説明すると、部下が目先の目標達成で満足してしまう理由は、視野が「短期の業務成果」という枠内に閉じこめられているからです。そして、あなたが部下に不満を感じるのは、「短期の業務成果」という小さい枠のなかで満足している部下の視野を拡大させる必要を感じているからだと説明できます。