もっと大きな成果を出したいのに、部下は日々のルーティンワークをこなすだけで満足している――彼らの意欲を引き出し、新しい仕事へのチャレンジを促すのに有効な質問が「憧れの人は誰?」。ロールモデルを考えさせるだけで、部下の働き方が劇的に変わる理由を紹介します。
部下は「矛盾に満ちたメッセージ」を受け取り続けている
会社の新ビジネスを考案したり、新規の取引先を開拓したりといった新しい挑戦をしてほしいのに、部下はやり方が決まった既存の仕事にばかり時間を使っている――組織の成長を目指すリーダーから見ると、定型業務以上のことをしない部下を物足りなく感じることもあるでしょう。
ただ、日本型組織において部下が無難な仕事ばかり選ぶのは、正直、無理もないと思います。
現状の延長線上のことをやれば「イノベーションを起こせ」と言われ、新しいアイデアを出せば「そんな突飛なこと何でうちの会社でやるんだ」と言われる。リスクを恐れて挑戦しないと怒られ、リスクを取って失敗しても怒られる。Aを優先すればBと言われ、Bを優先するとAと言われる――部下は、会社や上司から矛盾に満ちたメッセージを受け取り続けています。
さらに、成果をあげても給料が上がるわけでもなく、能力のある人から出世できるわけでもありません。第1講でお話ししたように、人間のモチベーション(動機付け)とは、「快に接近し不快から回避したがること」。頑張った結果の報い(=快)が明確でないと、リスクを取ったり新しいことにチャレンジしたりする気は起きません。
部下が、「結局のところ何をすればいいのか」と混乱し、「やっても何も得しないじゃないか」と悟り、「じゃあ何もやらない」とモチベーションを失くしてしまうのも、当然の結果でしょう。