お金持ちになればなるほど礼節をわきまえる――。それが世界の富裕層の共通認識だ。では、どんな人が彼らにモテて、どんな人がモテないのか。アメリカ・ロサンゼンルス在住の日本人投資家で作家のマダム・ホーが解説する。(内容・肩書は、2016年5月2日号掲載時のままです)
お金持ちが嫌う3つのタイプ
私は南カリフォルニア大学で知り合ったアジア出身の華僑留学生と結婚をし、夫婦二人で華僑やユダヤ人の富豪の方々から「本当のお金儲けの方法」を教わり、二十代で最初の1億円の資産を築き上げました。それからというもの、いろいろな国のお金持ちの人たちと親交を深めています。その経験を踏まえていうと、お金持ちが嫌う人には三つのタイプがあります。
一つ目は、時間にルーズで遅刻する人です。たとえば、華僑のお金持ちは有力企業のトップを務めていることが多く、当然のことながら彼らは“超高給取り”です。仮に年収が五億円として、月22日・1日8時間勤務だとすると、その時給は「5億円÷(22日×12カ月×8時間)=23万6742円」。さらに、それを“分給”に換算すると、「23万6742円÷60分=3945円」になります。
もしも、面会を約束した相手が10分遅れてきたら、「3945円×10分=3万9450円」を無駄遣いしたことになります。こう説明すると「タイム・イズ・マネー」の意味がご理解いただけ、約束した時間を守らずに遅刻することが、重大なマナー違反だとおわかりいただけるでしょう。遅刻しないことは、相手の方の時間をリスペクトすることでもあるのです。
そして二つ目は、相手の方のお話の腰を折る人です。誰しも自分の話を途中で遮られたらいい気持ちはしません。「この人は、私の話は聞きたくないのだな。だったら、もうお付き合いはやめにしよう」と思われてしまうことだって、十分にありえます。ユダヤの格言は「なぜ、耳が二つなのに、口が一つなのか? それは、自分のことを話すより、人の話を聞くほうがもっと大切だからだ」と戒めています。
最後の三つ目が、フレキシブルな対応が取れない人です。日本人の皆さんは「マナーが大切だ」と聞くと、いわゆる“マナー本”を開いて、そこに書いてあることを杓子定規に守ろうとすることが多いようです。以前、真夏の時季に東京へ来たとき、高級仏料理店にお誘いいただいたことがあります。食前酒の代わりに温かい紅茶をお願いしたところ、お誘いしてくださった方が「普通はワインかカクテルでは……」と目を白黒させていました。
実は乗ってきたタクシーの冷房があまりにもきつくて、そのことをお断りしたうえであえて温かい紅茶をお願いしたのですが、どうも従前からある仏料理のテーブルマナーに固執されていたようでした。本当に大切なことは、ゲストの状況を察して、フレキシブルに対応することであり、それが本当の意味での“おもてなし”なのです。