お金持ちのマナーは庶民のマナーとどう違うのか?「金持ち喧嘩せず」、「汚い家に金持ちなし」は本当か?お金持ちと接する機会が多い会計士、税理士、ジャーナリストに話を聞いた。(内容・肩書は、2016年5月2日号掲載時のままです) 

富裕層にも、もともと資産家の方とビジネスなどで成功してキャッシュフローがたくさんある方、その両方がある方がいます。ファイナンシャル・プランナーという仕事柄、それぞれのタイプのお金持ちにお会いする機会がありますが、資産家の方と、成功してお金持ちになった方とでは、行動や立ち居振る舞いにどこか違いがあるように感じます。

資産家、つまりもともとお金持ちの方々は、上品でガツガツしたところがなく、堅実で謙虚な人が多い。流行のものを次々買うようなことはなさらず、本当にいいものを大切に使っています。おじいさまやおばあさま、ご両親から受け継いだものを大切に使われる人も少なくありません。いいものをこれ見よがしに見せつけたり、ひけらかすこともない。

これに対して、若くしてキャッシュリッチになった人には、背伸びをする人が目立ちます。「周囲の人が持っているから」という理由でハイブランドのバッグや時計を身につけ、高級車をローンで買う。いずれも奥様主導で無理に背伸びをして買うというケースが多い。いずれ生活が立ちゆかなくなったり、下流老人にならないかと心配になることもあります。

「こだわり」への出費は惜しまない

資産家の人たちは、お金に対する考え方も堅実です。キャッシュフローはそれほど潤沢ではなくても、堅実な生き方が身についているため、困ってはいません。運用も過分なリスクを取ることなく、代々受け継がれてきた資産を守ることを重視します。とはいえ、「こだわり」への支出は惜しみません。

あるとき、資産家の奥様に「キャッシュフローがなくて大変なの。アドバイスをしてくれないかしら」とお願いされてお話をうかがったところ、会費が高額な有名テニスクラブの会員権や、あまり使っていない別荘があることがわかりました。ファイナンシャル・プランナーとしては、まっさきに手放してほしい資産です。ところが、「そのクラブは社交の場だから手放せない」「その別荘は夏の社交に必要だから売れない」とおっしゃる。社交といっても、夜な夜な高級なお店をはしごするのではなく、お茶の会やホームパーティをする程度です。ただ、代々続いているものだけに、「それは譲れない」とおっしゃる。本当のお金持ちは、自分たちなりの「こだわり」があり、そこへの出費は惜しまないのです。資産家のお金への考え方を目の当たりにした思いがしました。

お金の使い方も上手です。前述のとおり、「こだわり」があるものには出費を惜しみません。お茶会の和菓子は老舗からの取り寄せ、着物は老舗中の老舗に仕立ててもらうという話を、嫌みなくさらっとされる方がほとんどです。また、ブランド品はブランドショップで定価で買い、デパートの商品は外商部に自宅まで商品を持ってきてもらいます。だからといって、高級品ばかりを買うわけではありません。日用品はスーパーで買いますし、「今日はお客様が大勢いらっしゃるから、コストコに食料品の買い出しに行く」ということもあります。お金を使う場合の目的意識が明確で、それに適したお店を使い分けられるのも、堅実な資産家らしい行動といえそうです。

「こだわり」のなかには、「自分の趣味」も含まれます。茶道や華道をなさっている方もいれば、愛犬に愛情を注いでいる方もいます。草木を眺めながら散歩をするのが好きな方もいます。

趣味の内容はさまざまですが、多くの方がそれを極めていて、生活のそこかしこにそれが反映されています。世間話で趣味を話題にされるだけでも、「相当お詳しいのだな」と感じさせるレベルの方が少なくありません。