一体どんな勉強をすれば、東大に入ることができるのか? 第2弾は、マイナスから一気に巻き返す勉強法。「基礎からスタートしない」技術とは。(内容・肩書は、2019年8月16日号掲載時のままです)
効率を追求した「片付けない」「まとめない」大雑把学習術
高校3年生の模試の数学において、偏差値29のE判定を受けた杉山奈津子氏。そこから独学で編み出した、効率的な勉強方法とは?
「もともと地頭がよかったんでしょう」とよくいわれますが、そんなことはありません。進学校でもない地方女子校で、順位は常に180人中160位あたりをウロウロ。高3のセンター試験では、好きな科目のはずの日本史で、驚異の21点をたたき出しました(笑)。そんな私が1年間の宅浪で東大理科Ⅱ類に合格して、周囲からの評価は一変、「地頭のいい子」と称賛されました。でも、世の中に「地頭のいい人間」なんて存在しないんです。入学した東大で周囲を見渡しても、学生たちは普通の人ばかりでした。ただ唯一違っていたのは、みんなが効率的な勉強法を確立していたということです。
いくら努力しても結果が出ないと嘆く人と、短期間で成果を出せる人、その違いは「時間対効果」に見合った努力をしているかどうかです。努力は「質×時間」で決まります。たとえ100時間勉強しても、やり方が悪ければ結果はついてきません。例えば、「予習に力を注ぎ、完璧な美しいノートをとり、真夜中まで必死に勉強する」。こんな勉強法は、かける時間と労力に対してリターンがあまりに少なすぎます。
私は高校で芸術コースを選択していました。そのおかげで、いざ受験となったとき、必要教科のうち6教科も未習状態。マイナスから一気に巻き返しを図るには、徹底的に「時間対効果」の比率を上げるしかありませんでした。つまり「いかに効率よく、楽して結果を得るか」。「頭のよさ」とは、「要領のよさ」ともいえるのかもしれません。
まず気をつけたいのは、自分の基礎力に不安を感じても、基礎レベルからスタートしないことです。良質な参考書は基礎編をも網羅しているもの。最初からハイレベルなテキストからスタートしたほうが重複を避けられ、効率的に学べます。
そして、使う参考書を決めたら、最初から最後まで一通り目を通してください。真面目な完璧主義者ほど冒頭から丁寧に暗記していこうとしますが、それだと「木を見て森を見ず」状態になってしまいます。枝葉末節はさておき、学習の全体像を漠然とでも把握することがその先の習熟度を決めます。
未完のものに人は強く興味を惹かれる「ザイガニック効果」という心理学上の概念があります。テレビ番組で「続きはCMのあとで」と放送していると、不思議と続きが見たくなりませんか?
脳は空白を嫌いますから、完全に理解していない部分でも、気づくとそのことを考えてしまうんです。興味が湧けば、勉強していない際にも理解力は増し、記憶しやすくなります。