海外に渡って、超難関の世界トップ大学で学んだ人たちがいる。彼らはどのように勉強をしてグローバルに活躍しているのか。世界の名門で学んだ医学博士に話を伺った。(内容・肩書は、2019年8月16日号掲載時のままです)

AIに代替されない長期記憶の鍛え方

記憶には「短期記憶」と「長期記憶」の2種類があります。簡単にいえば、短期記憶は数十秒以内の記憶、長期記憶はそれ以上残る記憶です。人生で重要なのは短期記憶よりも長期記憶です。短期記憶はITの発達、AI(人工知能)の進化などで代替可能だからです。したがって、これから述べる記憶は長期記憶のことです。

記憶力を向上させるためにキモとなるのは、「脳内環境」の整備です。脳内環境とは簡単にいうと、前述した脳のさまざまな部位すべての細胞内の器官や細胞膜の状態などを指します。それらをベストな状態にすることが重要で、そのためのポイントは2つです。「ワクワク」することと、「ハラハラ」することです。

ワクワクとは好奇心であり、あなたの心に熱い炎のようにみなぎる情熱です。楽しいことに没頭し、気がついたら長い時間が経っていたという経験は誰にでもあると思います。この楽しくなれるものを見つけたら半分は成功したといえます。なぜなら、ワクワクして取り組むと、脳には集中力を生む脳内ホルモンの「ドーパミン」が放出されパワーがみなぎるからです。

ハーバードのエリート研究者たちも、ズバ抜けた記憶力や計算力を備えた冷静沈着な人物というよりも、皆、時に子どもっぽく見えるほど純真無垢で、情熱に溢れ、時間を忘れて専門分野についてワクワクしながら研究に取り組んでいました。

一方、ハラハラとはチャレンジすることです。今はできないけれど、できるようになったらどんなに楽しいかということに挑戦する。ハラハラは言い換えれば、普段は使わないような脳の使い方をすることでもあります。ご存じのように脳には左脳と右脳があります。左脳型は言語力や論理的思考、分析力などに優れ、右脳型は直感力や図形力などに秀でているといわれます。この2つはどちらがよいというものではなく、記憶力を高めるうえでは両方のバランスが取れていることが最適です。

ただ、私たちは通常、無意識に脳の特定部分ばかりを使いながら生活しています。傾向として、男性なら左脳中心、女性なら右脳中心という具合です。しかし、それでは行動がパターン化し、同じような考え方、アイデアしか浮かびません。そこで普段は使わない脳を使うことで、不得手な分「ハラハラ」し、それによってパターン化が解除され、自由な発想がわき起こり、脳を大きくパワーアップさせることができるのです。