システム開発においてトラブルの発生はつきもの。どんなに緻密な計画を立てていても、起きるときは起きます。しかし、優秀なプロジェクトリーダーは、トラブルが起こっても冷静に対処して、最小限のダメージに食い止めます。彼らはどこが違うのでしょうか? その答えは、これからお話する「マネジメントの大原則」を守っていることなのです。

トラブルの芽を摘む方法①:タスクの分割

システム開発は、とにかく不確実性が高い。プロジェクトは、うまくいく場合のほうが少ない――管理職はこう腹をくくって、「いかにトラブルを回避するか」よりも「いかにトラブルに対処するか」という心持ちでいるべきです。

トラブルの芽を摘み取り、大炎上するのを防ぐために有効な手法が、タスクの分割です。プロジェクトの進行計画を立てるときは、ロードマップを引き、タスクを分割して、細かいマイルストーンを置きましょう。

小学生の頃の夏休みの宿題を思い出してください。8月31日になって、何も終わらず大慌て……という人も多いと思います。原因は、「8月31日までに宿題を終わらせる」という大きな目標しか立てていなかったからです。もし「8月の1週目に読書感想文を、2週目にドリルを、3週目に自由研究を終わらせる」と細かい計画を立てていたら、もう少しコツコツと取り組んでいたと思いませんか。

締め切り直前にならないと行動しないのが人間です。時間に余裕があると、「まだ大丈夫」「最後になんとかなる」と怠けてしまいます。だからこそシステム開発でも、大きな目標を小さな課題の塊に分解し、ひとつひとつに期日を設け、メンバーが達成可能なサイズにタスクを切り分けて不確実性を下げることが管理職には求められます。

タスクを分割するもうひとつのメリットは、モメンタム(勢い)の創出です。「難関大学に合格するぞ」と遠い先のゴールを目指すよりも、「まずは明日の小テストから頑張るぞ」と目の前にゴールを設けたほうが、目標達成への道のりがはっきりイメージされてモチベーションが上がります。小粒で短期的な目標設定が、プロジェクトの進行に勢いをもたらすのです。

また、人間のモチベーションは、成功体験によって維持され向上します。大きな成功である必要はなく、成功の回数のほうが大事です。マイルストーンを細かく設定すれば、チームメンバーは小さな「できた!」を何度も経験し、「もっと頑張ろう」という意志がプロジェクトを前進させます。

チーム全体あるいは個々のメンバーがマイルストーンを達成できなかったときは、すぐに課題を検証しましょう。失敗体験が繰り返されることを防げばモメンタムを維持することができるうえ、まだ小さい段階のトラブルに対処することができます。