プロジェクトをゴールに向かって進めていくうえで、トラブルはつきもの。何が起きても立て直せる開発体制が求められます。そのために最も重要なファクターが「バッファ」と「デッドライン」を使いこなすこと。この2つをどう設定し運用すれば、最良の成果を得られるのか。プロジェクトマネジメントの核心をお伝えします。
プロジェクト管理の手法…WBS、ガントチャート、かんばん方式、付箋
最終ゴールから逆算して、プロジェクト全体を小さなタスクに分解する。ここまで繰り返しお話ししてきた、システム開発でよく利用されるこのプロジェクト管理の手法は、WBS(Work Breakdown Structure作業分解構成図)と呼ばれます。
WBSの肝は、タスクの“分解度”です。街中で目的地にたどり着くためには、ちょうどいい縮尺の地図が必要ですよね。縮尺が大きすぎても小さすぎても、道に迷ってしまいます。システム開発も同じで、プロジェクトを適切なタスクに区切れるかどうかが進行のスムーズさを左右します。
とはいえ、文系管理職がタスクの分解度を判断するのは難しいと思います。ここはエンジニアに協力を仰ぎましょう。
まずは自分でたたき台を作ります。新規機能リリースがプロジェクトの最終ゴールの場合、ゴールから遡って、ユーザーアクセプタンステスト・システムテスト・結合テスト・単体テスト……というように、ざっくりとしたフェーズを書き出します。たたき台ができたらエンジニアに見てもらい、各フェーズの中にどのような具体的なタスクがあるかを、埋め込んでもらいましょう。
最近はこの作業がすごくしやすくなってきており、Chat GPTに指標を入力してWBSを引くように指示するだけであっという間に叩き台ができあがります。もちろんそのまま使えるものばかりではありませんので、自分のイメージと相違がないかの確認は必ずしてください。この時にイメージとの相違がある場合は「指示が悪い」ことが大半なので、メンバーへの情報共有のスキルアップにも適しています。
WBSの手法でプロジェクトを小さいタスクに分割したら、次に、タスクの進捗を視覚化する仕組みを用意します。
代表的な方法のひとつは、ガントチャートです。縦軸にタスク、横軸に時間を置き、左端をプロジェクト開始日、右端を終了日として、タスクの流れを書き出すことで、全体のタイムラインが一目でわかります。
明確なタイムラインが決まっていないアジャイル型開発で多用されるのは、かんばん方式と呼ばれる手法です。かんばん方式では、左から「やること」「進捗中」「完了」の3つのボードを並べ、タスクが書かれたカードを一個一個左から右のボードへ移動させていくことで、全体の進行状況を視覚化します。
Asana、Trello、Miroといったプロジェクト管理専用のサービスを利用してもいいですし(弊社ProgateではAsanaを使っています)、チームやプロジェクトの規模が小さければ、ホワイトボードに付箋を貼るだけでもいいと思います。タスク1個を付箋1枚に書き出し、ホワイトボードに付箋を貼り付けて、終わったタスクを剥がしていくだけでも、視覚化効果は抜群です。
マネジメントに期待される大きな仕事の一つが「目標を明確にする」こと。期日が設定されたり、メンバーのタスクが可視化されるだけで目標はより明確になります。