値引きで競わず、サービスのクオリティを上げて消費者のニーズに応えることで企業は成長していく。サービス業、特に飲食業界においては、あらゆる場面で働く「人」が企業価値を生み出している部分が大きいと言えます。働く人々のモチベーションをアップするためには、会社の未来像を従業員と会社が共有できるかどうかにかかっていると菊地さんは訴えます。
人が思うように採れない時代、会社は人に何を訴えるべきか
人口減少に加え、労働力の追加的供給に期待が持てない今後は、まさに人が採れない時代です。どんどん人がいなくなると言ってもよく、そんな時代に伸びる会社とは、シンプルに、人が働きたくなる会社だと言えるでしょう。
人が働きたくなる会社とはどんな会社か。そもそも、人は会社に対して、何をしてくれるところだと期待しているのか。そこから考えてみます。
日本社会の特徴とも言えることですが、会社が個人のセーフティーネットになってきたという歴史があると私は思います。コロナ禍に見舞われたとき、政府は経済界に対して雇用を守ってほしいと何度も要請しました。例えば、アメリカの場合、2020年4月には失業率が一気に15%近くにまで上がっても、給与保護プログラムや失業手当の拡充などの措置を講じたので、大きな社会不安は起きませんでした。しかし、日本では、事の是非は別として、会社を支援することで、間接的にセーフティーネットを維持しようとしたと私は感じています。
未来を考えたとき、会社と個人の関係は本当にこれでいいのでしょうか。この関係では、個人は会社に守ってもらう代わりに会社に従属しています。しかし、会社と個人は本来、もっとフェアな関係であるべきだと思います。会社がこれだけ守ってやるから、その代わりに必死に働けよ、と。これはもう昭和の遺物であって、やはり、会社と働く個人は対等でなければならない。そういう意味で、働く個人にとって魅力のある会社にならないと、人材がどんどん離れてく時代の経営はうまくいきません。
働く個人から見れば、会社を通じて自己実現ができる、自分の成長を図ることができる、生活の基盤が構築できる、そうした場が、会社です。個人と会社は、互いのメリットを提供できる大人の関係をつくっていくことが大事なことだと思います。最近、短時間で単発な仕事を請け負う労働が増えてきました。これも会社とフェアな関係でありたいと思う人が増えてきていることが背景にあると思います。