長いコロナ禍が終わりを迎え、日本経済には消費の波が再来はじめました。今の日本はどのような状況にあるのか。飲食業界の経営者として3年間の荒波を乗り越えてきた菊地唯夫さんは、今後のサービス業の企業経営を握るカギは「労働力不足」をどう解決するかにかかっていると語ります――。
コロナ禍からのリベンジ消費をコスト高が相殺
現在の日本経済はどのような状態にあるか。現場を預かる経営者のひとりとしての私には、現状は、とてもわかりにくい状況のように見えています。
昨年10月にIMF(国際通貨基金)が発表した2023年の予測では、日本の経済成長率は1.6%。先進国の中でもっとも高い数値が出されました。その理由として、日本ではコロナ禍からの回復を受けてのリベンジ消費が先進国の中でも遅れて始まったため、と考えられています。
実際、今年の上半期を見てみれば、さまざまな業界でリベンジ消費が活発になっています。
注意しておきたいことのひとつは、リベンジ消費に持続性があるかどうか、ということ。さらに、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって、さまざまな原材料価格やエネルギーのコストが上がってきており、リベンジ消費によって上がった分を相殺してしまっていることです。
逆に言えば、この上半期にリベンジ消費が起こっていなかったら、単純にコストばかりが上って消費者もついてこられなかったと思います。リベンジ消費によるいくらかの余力があったから、原材料価格やエネルギーコストの上昇分を一時的に凌げている。それが、今の日本の経済が置かれている現状です。