サービスとは、日本社会では「無料」を意味しがちですが、お客様が本当に納得するサービスを提供し、結果として単価が上がるということを持続させることが企業経営の鍵だと言えます。そのためにはまず、人の力が必要。その不足を補うために、テクノロジーといかに共存していくかについて考えたいと思います。
「規模の論理」が追求できないサービス業の実態把握を
第16話では、日本のサービス業が「サービス」という付加価値を価格転嫁できずにコスト削減に偏った戦略を取ってきたことと、その弊害について述べました。
そもそも日本社会では、「サービス」という言葉は「無料」を意味すると言っても過言ではありません。サービス業においてサービスが無料では、サービス業が成り立ちません。そこで、チップを導入したらどうかという議論もありますが、日本社会はチップという文化を簡単には受容できません。
私たちにできるのは、お客様が本当に納得するサービスを提供し、結果として単価が上がるということを、いかに持続させるか。これに尽きますが、簡単なことではなく、できる企業とできない企業があると思います。
もうひとつ、日本のサービス業は、すべてではないけれども「規模の論理を追求できない」ということ。製造業であれば規模の拡大に比例して価値も拡大します。しかし、サービス業では規模がある程度まで行くと、その先のスケールメリットは生まれなくなります。
規模が拡大すると、本来なら右肩上がりになるグラフは放物線を描くように下がります。一定の規模を超えると陳腐化がおきたり、カニバリゼーション(自社競合)が発生したり、他にも特定の食材が入手困難になったり人手が不足したり、さまざまな理由で規模の拡大の効果がなくなるのです。
こうなると、規模を縮小して、価値が最大になるところを見極め、最適な規模を模索することになります。そうして、最適な規模を突き止めたとしても、そこがゴールではないのです。そもそも、人口減少によって規模が小さくならざるをえないからです。
しかし、規模を小さくし続けながら価値が最大になるポイントを探ればいいのかというとそれも違います。縮小均衡はそもそも、資本主義では成り立ちません。
放置すれば規模が縮小し、価値も縮小してしまう。それを最大の価値が出るところまで戻すために必要なものは、私は、テクノロジーだと思っています。