いま、日本企業の株価は上がり続けていますが、現在も活動している会社の「企業価値」とは、コロナ禍という未曽有のドラマと地続きなのです。今後、日本企業はいかにして企業価値をさらに高めながら、成長していこうとしているのでしょうか。コロナ禍と戦ったサービス業界の一企業の、「存在意義」をかけた攻防戦の真相に迫ります。

議論すべきは「コロナ禍より前の2年」の企業業績

新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、経済活動が止まったかに思えた2020年春の日本。私が最初にしたことは、従業員の不安をなんとか取り除こうとすることでした。

わが社が置かれた状況は、他の外食と比較してもかなり厳しいものでした。われわれには時短営業協力金と無関係の事業もたくさんあります。そのため、外食店を休業することに対して支給された時短への協力金が売上減に占める割合は、他の外食企業で40~50%になるのに対し、わが社では10%程度にすぎなかったのです。

その結果として、自己資本の6割を一気に失うことになったのですが、私は当初の従業員への説明会で、あえてコロナ禍で沈んだ分を取り返そうという話をしませんでした。

それよりみんなに訴えたのは、いま、議論すべきなのはコロナで落ち込んだ売上ではなく、コロナ前の2年間の増収減益の原因だと言いました。

2017年までは増収増益、しかし、2018年と2019年は2年連続して増収であっても減益になっていました。2020年に大きく落ち込むのは社会情勢であるから仕方がないですが、いま、考えるべきはその前の2年間なのです。

なぜかと言うと、その2年間の減益の原因を突き止めて改善しなければ、コロナ禍が終わった後にも、そこまでしか回復できないからです。そのように、私は社員に説明しました。そこで付け加えたことは、ほかのことは、ファイナンスで何とかするから心配するな、ということでした。