これまで、営業パーソンは現代のスパイであると述べてきました。

今回はさらに踏み込んで、営業パーソンは顧客のどういう情報をつかむべきか、顧客を知るとは何を知ることなのかを孫子から学んでいきましょう。

これができれば、売れる先を絞り込んでアプローチすることができ、あなたの営業成績は安定的に高いものになるはずです。

顧客が買う可能性のない商品は紹介すべきか

さて、問題です。

あなたの上司である営業マネージャーから、新商品の紹介を担当顧客全件にするようにと指示が出ました。あなたならどう対応しますか?

A:これまで提案したことのない新商品なので、先入観を持たずにとにかく指示された通り全件に当たる。
B:新商品といってもこれまでの長い付き合いがある顧客は、興味を持つかどうかは聞かなくてもわかる。ニーズのない先に紹介して「うちのことがわかってないな」と思われないように気を付ける。

新商品なのだから、とにかく全件に紹介するようにと指示をする営業マネージャーの気持ちもよくわかります。営業パーソンの勝手な判断で紹介するしないを決めさせると販売機会を逃しかねません。特に、経験の浅い新人や若手には全件紹介を徹底させたいところです。

一方で、担当顧客と長く付き合ってきて、その顧客が買いそうかどうかを判断できるベテラン営業であれば、買う可能性もないようなものを紹介してしまうと、顧客からの信頼が損なわれることを危惧するでしょうね。「○○さんはうちのことをよく理解してくれていると思っていたけど、こんな売り込みをするということはそうじゃなかったのだね」なんて言われたら、冷や汗、あぶら汗がタラーッと流れてしまいます。

営業パーソンの属人性を排除し、全件、漏れなくアプローチするということも組織的な営業活動のためには重要なことです。ベテラン営業が必ずしも顧客のことを正しく理解しているとは限りませんから、変な思い込みで「どうせ提案しても買わないだろう」と判断してしまう恐れがあります。「彼を知り己を知る」のはなかなか難しいですね。

孫子はこのような場合どう考えるか、見ていきましょう。