日本は、世界に最たる「睡眠不足大国」です。1日当たりの睡眠時間は、OECDが調査した世界33カ国中最下位。睡眠不足がもたらすネガティブな側面「睡眠負債」は、個々人の健康だけでなく、国家の経済にも大きな損失を与える原因にもなります。限られた1日24時間の中で、どうしたら「睡眠の時間」を確保し、質を向上させることができるでしょうか。

「睡眠不足大国」ニッポン

日本は世界に最たる「睡眠不足大国」であることをご存知でしょうか。

OECD(経済協力開発機構)がまとめた2021年版の「世界における時間の使い方」に関する調査報告の「睡眠」の項目を見ると、1日当たりの平均睡眠時間が長い国の1位は9時間13分の南アフリカでした。2位は9時間2分の中国です。では日本はどうだったかというと、調査対象国33カ国中で最も短い7時間22分でした。南アフリカより1時間51分も睡眠時間が短かったのです。

出所:OECD 2021年版「世界における時間の使い方」より

そうした睡眠不足がもたらす最も大きな懸念が、個々人の健康への悪影響です。例えば、睡眠時間が7~8時間だと、肥満、高血圧、脂質異常症リスクが低くなるのに対して、睡眠時間がこれより短くなるほど、それらのリスクが高まるという報告があります。また、睡眠時間が7~8時間の人と、5時間未満の人とを比較すると、5時間未満の人は、糖尿病になるリスクが2.5倍も高くなるという報告もあります。

このような話をすると、働き盛りのミドルのビジネスパーソンの間から、「自分たちが寝る間を惜しんで働いているから、今でも世界第4位の国内総生産(GDP)を稼ぎ出す経済大国でいられるんだ」といった声があがりそうです。しかし、1人当たりのGDPと睡眠時間との関係を見ると、そうとも言えないようです。例えば、睡眠時間が日本より1時間半近くも長いフィンランドの1人当たりのGDPが、日本とほぼ同じ水準に達しています。それだけフィンランドの人たちは、しっかり眠りながら日本とほぼ同じ経済水準に達していることになります。このようなデータを見ても、日本の労働生産性について危惧するのも無理はないでしょう。

睡眠時間が7時間30分以上のフィンランドと、睡眠時間が6時間30分未満の日本の1人当たりGDPがほぼ同じ水準にあることがわかる。(出所:Matt McLean/Sleep Cycle/IMF/The Economist)