「マイクロ法人」という名前をよく見聞きするようになりました。簡単に言えば、「社長ひとりで運営する会社」ですが、事業拡大が設立の目的ではなく、真の目的が、個人事業主による国民健康保険料等の節減にある会社のことを区別する呼び方です。それだけを聞くと確かに魅力的ですから実践する人が近年増えていますが、本当に節税に役立つのでしょうか。また、そこにデメリットはないのでしょうか。

「マイクロ法人」は節税のためのスキーム

「マイクロ法人」とは社員を雇用せず、社長ひとりの体制で運営する小規模の株式会社や合同会社のことですが、一般的には「ひとり会社」と言います。

それに加え、事業拡大を目的とせず、個人事業主が国民健康保険料等の節減のために設立する会社の場合に「マイクロ法人」という呼び方が適用されることが多いのです。この呼び名は法律に規定されたものではなく、ネット上で生まれた、いわゆる「造語」のようなものです。

なぜ個人事業主が、お金のかかる設立手続きや面倒な税務手続きまでしてマイクロ法人をつくるかといえば、稼げば稼ぐほど、国民健康保険料がかなりの負担になるからです。そのため、個人事業とは別に法人を設立し、社会保険(健康保険・厚生年金)への強制加入をしたうえで役員報酬を最低限に抑え、社会保険料の額を減らすのです。

例えば、役員報酬の月額を6万3000円未満にすれば最低等級として扱われ、社会保険の個人負担は月1万円程度に抑えることができます(会社の折半分を含めても2.5万円以下)。そのため、手続きが面倒でも実践する人が多いというわけです。

現時点ではマイクロ法人は合法ですから、それに対して道義的な言及はしません。ただし、魅力的な社会保険料の節減対策かと言えば、わたしは長期的に続けていくことは無理のある対策だと考えます。その理由として、マイクロ法人のデメリットについて触れていきましょう。