起業して会社を設立するときや、個人事業主から法人成りするタイミングで、まずしなければならないのが各種の届出です。自分で手続きをする場合、ただちにするべきことと、後回しでもいいことの区別がつかず、コンプライアンス面、経営面、節税面で損をするだけでなく、思いも寄らないトラブルの原因になることもあります。税務や社会保険に関する届出について解説するとともに、銀行口座開設や、起業と同時に進めたい節税対策なども紹介します。

税務&社会保険に関する届出

起業した際に税務に関する届出は各種ありますが、税務署に提出するのは以下の4つとなります。内容が複雑なため、税理士や会計士、社会保険労務士など専門家の力を借りるのがおすすめです。どうにか自分でやってみたいと考えているのであれば、せめて会計ソフトを導入して、届出の作成機能を活用するといいでしょう。

■法人設立届出書

会社をつくったことの報告として、定款や登記簿謄本(登記事項証明書)とともに設立日から2カ月以内に納税地の税務署に提出します。さらに、同様の届出書を税務署以外に、都道府県の税事務所、市町村役所(市税事務所と呼ばれる場合も)の2カ所に同じものを提出しなければなりません。税務署に提出しただけで終わりではありません。その他の2カ所も忘れずに提出してください。

■給与支払事務所等の開設届出書

会社を立ち上げて社員や役員に給与を支払い、所得税を源泉徴収して国に納めるための届出書で、提出は従業員を雇用してから1カ月以内と定められています。
ちなみに、徴収した従業員の所得税は、給与を支給した月の翌月10日までに納めなければなりませんが、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する届出書」を提出することで、納付作業を半年に1回で済ませることができます(ただし、給与の支給人員が常時10人未満の事業所のみ適用)。そうすることで事務手続きは非常に楽になりますが、1回あたりの納税額が大きくなるため、資金繰りに注意が必要です。

■青色申告の承認申請書

申請期限は会社設立日から3カ月以内で、期限を過ぎると申告ができなくなるので厳守となります。規定の帳簿をしっかり備えつけることで、様々な税制上の特典が受けられる制度が青色申告です。赤字が発生した場合に最長10年間繰り越すことができたり、設備投資をした場合の減価償却について、1セット30万円未満の備品や設備(少額減価償却資産)に限り、一発で経費として落とすことができるなどの特例も適用されます。

■社会保険に関する届出

たとえ社長ひとりの会社でも、法人は社会保険(健康保険と厚生年金保険)に強制加入となります。事業所として社会保険の加入手続きをするのは管轄の年金事務所です。

その他、労働基準監督署では労災保険、また公共職業安定所(ハローワーク)で雇用保険の手続きをします。労災保険と雇用保険は従業員を雇う場合のみで、社長は適用外。これらの保険に加入すると毎年、申告等の手続きが生じます。社会保険では、算定基礎届という、毎年の社会保険料を決める手続きが必要です。

ちなみに、税務に関する届出は税理士の業務範囲ですが、社会保険に関しては社会保険労務士(社労士)の仕事の範疇となります。給与計算も含めてセットで依頼したい場合は、社労士に依頼するのもいいでしょう。また、税理士事務所に相談すれば、社労士と連携してくれることもあります。