「会社を設立する際はできるだけコストを抑えたい」。誰もが考えることだと思います。そこで必ず「合同会社」という形態に目がいくはずです。「少々信用度が低いくらいだろう」「費用が少なくて済むのだから問題はない」と考えて合同会社を選択すると、思わぬ落とし穴にハマることも……。株式会社と合同会社の違いを解説していきます。
株式会社と合同会社にはどのような違いがあるのか
株式会社は英語で「Limited Company」ですが、合同会社は(Limited Liability Company=LLC)と言います。その違いを項目ごとに見ていきましょう。
■出資・意思決定
株式会社の最大の特徴は、所有と経営の分離にあります。上場企業をイメージすればわかりますが、実際に会社を運営する経営者とは別に「株主」がいて、会社の意思決定に関し、出資割合に応じた議決権を持ちます。しかし、日本の株式会社の約99%を占める中小企業のほとんどは「オーナー企業」です。所有と経営は分離できておらず、多くの場合、社長・会長が筆頭株主として圧倒的な議決権を持ちます。
合同会社は、「出資者=経営者」であることが大前提となります。また、意思決定に出資割合は関係ありません。合同会社の場合は株式ではなく出資金といいますが、例えば経営者ふたりの出資割合が99:1であっても、議決権は1対1、ひとり1票の完全合議制です。
■代表者の名称
株式会社は「代表取締役」、合同会社の場合は「代表社員」で、代表でない役員は「社員」といいます。単なる呼び方にすぎませんが、「代表社員はなんだかパッとしないなあ。代表取締役がいいな」という考えで、合同会社でなく株式会社にする人もいます。
■役員の任期
株式会社は最長10年の役員任期となりますが、合同会社には任期がありません。株式会社は任期がくると再び役員としての登記が必要になり、あらためて登記費用や司法書士に依頼する場合はその手数料が発生します。この点では、任期のない合同会社はコスト的に非常に有利です。
■株式の公開
株式会社は上場が可能です。一方、合同会社は株式という概念がないため、上場はできません。将来、上場を視野に入れているベンチャー企業の場合は、合同会社にするべきではないということです。
■社会的信用
合同会社でも大企業は存在するため一概には言えませんが、株式会社のほうが信用力は高め、合同会社はやや低めです。ときに、「合同会社とはなんですか?」と質問されることもあるでしょう。
■決算公告義務
株式会社は官報で決算書の開示をしなければならないというルールがありますが、形式上だけのものになっており、中小企業で決算公告をしているところはほとんどありません。これも将来、上場を考えている会社のみが実行しているのが現状です。一方、合同会社にはこの義務はありません。
■定款認証
両者とも会社のルールブックである「定款」を作成する必要があります。ただし、合同会社に関しては定款をつくる必要はあっても、「認証」は不要です。認証とは、公証人役場でお墨付きをもらう手続きのことで、株式会社の場合、そこにかかる費用は資本金100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、300万円超で5万円となります。軽微な金額ではありますが、合同会社のメリットといえます。
■登録免許税
設立の際に納める必要のある国税です。基本的に資本金の1000分の7で計算されますが、最低金額が株式会社で15万円、合同会社で6万円となります。司法書士に登記手続きを依頼する場合は別途手数料がかかります。これも、コスト面で合同会社のほうが割安です。
以上が、株式会社と合同会社の仕組みとしての違いです。これだけ見ると、合同会社のほうが義務も少なく、コストメリットもあっていい体制のように思えるかもしれません。しかし、それ以上に大きなデメリットがあります。次の項で説明しましょう。