「社宅制度」をつくり、社長や従業員の自宅の家賃を会社が立て替える。あるいは、「企業型DC」による退職金制度をつくり、従業員のエンゲージメントを高める――。こうした社内制度を活用した節税対策は、一つひとつのものは大きな効果を生まなくとも、積み重ねることで大きな節税効果を発揮することになります。中小企業におすすめの、代表的な取り組みを見ていきましょう。
「社宅制度」を立ち上げ、家賃で節税
社長も従業員も、働く人のほとんどの人には「家賃」が発生します。これを、社宅制度を活用し会社の経費にすることで、少額ではありますが、会社は節税ができ、社長や従業員も個人の社会保険料や所得税、住民税の負担を軽減することができます。
ややこしくなりますので、ここでは「社長ひとりの会社」を前提に説明していきましょう。以下のプロセスで社宅制度を活用します。
❶会社名義で賃貸借契約する
❷会社が家賃を支払い、社長が社宅として住む
これだけでは、家賃が経費に計上できるものの、そのぶんは社長に対しての役員報酬となるため、個人の社会保険料や所得税、住民税は増えてしまいます。そこで、以下を行います。
❸一定金額の「家賃相当額」を社長から徴収
❹家賃で得しているぶん、役員報酬を削減する
これがどういう効果を生むのか、以下のシミュレーションを見ていきましょう。
月額60万円の役員報酬がある社長が、家賃10万円のアパートに住んでいる想定です。このアパートの賃貸借契約を会社名義にして、社長に貸します。社長から「家賃相当額」として家賃の50%の5万円を徴収し、得している5万円分を役員報酬から引き下げるのです。
その結果、社長自身の実質的な収入と家賃負担額は変わらないまま、社会保険料、所得税が削減されます。また、数字上の年収が下がるので、次年度からは住民税も下がります。
会社としては、家賃負担の経費が増えたものの、役員報酬の経費が下がるので、経費の総額はトントンになります。ただし、社会保険料の会社負担分は減少するというわけです。
なお、上記はひとり社長を前提としましたが、そのほかの役員や従業員にも適用できます。また、会社が物件を購入し、融資を受けて毎月返済する場合でも可能ですが、経費になるのは金利の部分のみとなります。
また、上記のシミュレーションでは「家賃相当額」をわかりやすく50%としましたが、この割合の算定には物件の評価額など細かい計算が必要となります。しかし、さらにこの家賃相当額を引き下げることも可能です。自分で対応することも可能ですが、税理士などに相談することをおすすめします。