仕事で何かを覚える必要に迫られたとき、どんな方法をとっているでしょうか。参考になる関連資料などを目で追っているだけだとしたら、それは非効率だといえます。なぜなら、「手書き」することで格段に記憶しやすくなるからです。そういえる脳のメカニズム、そして手書きを使った記憶術を紹介します。

脳は手と指の挙動を細かくモニターしている

記憶には「手書き」が有効だといえる理由は、脳に対する刺激にあります。脳の一番外側にある「大脳皮質」は、神経を通じて体全体のあらゆる部分をモニターしています。「いま、手はこんなふうに動いているぞ」といった情報を吸い上げているのです。

ただ、体のすべての部分を均等にモニターしているわけではありません。大脳皮質の広い範囲を使って細かく挙動を追っている部分もあれば、逆に大雑把にモニターしている部分もあります。そして、大脳皮質がほかの部分と比べて格段に広い範囲を使ってモニターしている部分こそ、手と指なのです。

おそらくその理由は、手と指がそれだけ人間にとって重要な部分であるということの裏付けなのだと思います。手と指の巧緻性、つまり器用さが高い人ほど頭の回転が速いという研究結果もあるほどです。

いずれにせよ、大脳皮質が広い範囲を使って手と指の挙動を細かくモニターしているということは、手と指を使えば使うほど多くの刺激を脳に与えられるということを意味します。そのため、手と指を使うことが記憶を担う脳を活性化させ、それだけ記憶にも役立つわけです。

むかしから、「認知症防止には手や指を使うことがいい」といわれます。それもやはり、手と指を使うことで脳に多くの刺激を与えられるからなのでしょう。手や指が「第2の脳」と呼ばれる理由もここにあるのだと思います。