「組織はリーダーの器以上には大きくならない」と、生前の野村克也さんは常に口にしていました。リーダーには様々なタイプがありますが、野村さんがもっとも重視していたのが「深沈厚重タイプのリーダー」。さらに、リーダーに求められるものは「3つの『見る』である」ともいいます。それは一体、どういうことなのでしょうか。
中国の思想家・呂坤が説くリーダーの資質
中国・明時代の混迷の時代に生きた政治家・思想家である呂坤は、自著『呻吟語』において、リーダーの資質を3つ挙げている。
●深沈厚重……ものごとに動じず、どっしりと落ち着いて深みのある人物
●磊落豪雄……太っ腹で豪快、細かいことを気にしない人物
●聡明才弁……頭がよくて、才能があり、弁舌さわやかな人物
●磊落豪雄……太っ腹で豪快、細かいことを気にしない人物
●聡明才弁……頭がよくて、才能があり、弁舌さわやかな人物
この3つのうち、野村克也は自身の経験から「もっともリーダーに適しているのは深沈厚重タイプである」と述べている。実際に野村は、いつもベンチのなかでじっと腕を組み、どっしりと戦況を見つめていた。しかし現代では、見るからに才気煥発で立ち回りのうまいタイプがリーダーとしてもてはやされている。これを生前の野村は危惧していた。野村の名言をまとめた『野村克也全語録』(弊社刊)から引用したい。
「どっしりと構え、じっくり考えるリーダーは、旧世代の遺物として扱われているように思えて仕方がない。うわべだけの才覚のタイプをリーダーに置く組織が、果たして長続きできるのか。わたしには、とてもそうなるとは思えない」
何ごとにも動じずにどっしりと落ち着いて構えているリーダーは、確かに減っている。その姿を「愚鈍だ」「臆病だ」「優柔不断だ」と見る向きもある。「タイパ」こと、タイムパフォーマンスを重視し、すぐに結果を求めようとする若い世代には、深沈厚重タイプのリーダーは、なかなか評価されにくいのが現状なのだ。