あなたがお客様に商品提案をしたとして、普通の提案であればお客様はきっと、他社の商品と機能性、ときに商品価格で比較をするでしょう。キーエンスには、お客様が一目見ただけで「この商品が欲しい!」と思わせる演出力があります。一般的な営業とキーエンスでは、どのようにデモンストレーションが違うのか? あなたの会社でもすぐに実践できる演出法をご紹介します。

ベストデモンストレーションで、商品を欲しくてたまらなくさせる!

キーエンスには「ベストデモンストレーション」という最強の武器があります。ベストデモンストレーションとは、その商品の利点が一番わかるシーンを、お客様の前で実演してみせることです。お客様自身も気づいていない潜在ニーズをつかんでいれば、デモンストレーションでお客様を驚かせることができます。

例えば工場で使う、バーコードを読み取るのが速いバーコードリーダーがあったとします。一般の会社がこの商品を売り込むときは、仕様書の中で「このバーコードリーダーは回転数が1分間に◯◯回あって、非常に速い」などと特長を書いてきます。ではキーエンスなら、どう売り込むのでしょうか。ここでもポイントは、特長ではなく利点です。「読み取るのが速い」というこの商品の特長をお客様にとっての利点に直すと、「製造ラインに製品を素早く正確に流すことができる」となります。製品を搬送するスピードが上がると、生産性が上がります。キーエンスではデモンストレーションを使って、そこを見せるのです。

これはかつて私がキーエンスに在籍していた頃のお話をしましょう。まず、デモンストレーション用に手頃な大きさの、コマのように回る回転台をつくります。回転部分にはバーコードが何個もついています。すごいスピードで回っているバーコードを、このバーコードリーダーで読み取り、その場でモニターにデータが打ち出されるようにセットするのです。その様子を動画に撮ってお客様にお見せすると、「えっ、これ全部読み取れてるの? めちゃくちゃ速くない?」と驚かれて、「これならうちの求めているスピードに対応できて、生産性が上がるな。一度ラインで試してみようか」となるわけです。

つまり生産性やセキュリティといった、お客様の本当のお困りごとを解消するための、一番わかりやすい例をデモンストレーションする。時間的には短くてかまいません。商談中に「2分だけください」と言えば、だいたいの人は「いいですよ」と言うはずです。そこで、いかにして「え、すごい」と言わせるものを組めるか、というのが、キーエンスのベストデモンストレーションに対する考え方です。

ここで大切なことは、お客様は提案において「何かを“言って”ほしい」と思っているのではなく、「“見せて”ほしい、そして“体験させて”ほしい」と、思っているということです。そして、営業パーソンはそれを叶えることが重要なのです。人間は、数字やスペックを聞くだけでは、商品の実際の動きや得られる体験を想起することは苦手です。ですから、その点をデモンストレーションで解決するのです。